インバウンド(訪日外国人観光客)が円滑に移動、快適に滞在できる環境を整備する―。国土地理院は、外国語版地図の具体的な地図記号を2015年度中に作成、公開する。「外国人にわかりやすい地図表現検討会(座長、森田喬法政大学デザイン工学部教授)」で行ってきた検討の成果を踏まえ、地名などの英語表記のルールについても地理院が作成する英語版地図に適用する。地理院は検討会(報告書)が示した18種類の地図記号案を測量法第34条で規定する「公共測量作業規程の準則」の一部改正(案)に盛り込み、2月7日まで意見を募集する一方、視認性など確認、外国語版地図の地図記号を確定させる。
検討会(報告書)が示した地図記号案は、外国人が日本国内を移動したり、滞在するときに必要になると思われる「よく訪れる場所」としてホテルやレストラン、鉄道駅など12種類、「便利な場所」として観光案内所や郵便局など4種類、「緊急時に頼れる場所」として病院、交番―の2種類の合わせて18種類を考案。ピクトグラム(JISZ8210「標準案内用図記号)」が既にある場合は、デザインの整合にも留意した地図記号案と地名表記案を東京都内の観光地などで約1000人の外国人(92の国・地域)に提示し、それぞれの案のわかりやすさや視認性を確認した上で「公共測量作業規程の準則」の一部改正(案)に載せた。
地理院は、これまでの検討の成果を普及させるため、15年度末まで「20年オリンピック・パラリンピック大会に向けた多言語対応協議会」などを通じて報告書と地理院の取り組みを関係団体などへ周知。また「公共測量作業規程の準則」の改正に合わせ、地図記号を誰でも利用できるようデジタルファイルで公開し、試作図も作成して公開し、外国人に分かりやすい地図のイメージの共有を図る。地名の英語表記のルールとこれに基づいて集録した主要な地名の英語表記リストも作成し、公開する。
これまではわが国には外国人向けの地図の多言語地名表記や地図記号に関する標準的なガイドライン類はなく、地名表記や使用される地図記号は統一されていないという状況が続いていた。
しかし、年間2000万人を超す外国人が訪日するようになり、20年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催も控えていることから、地理院は多言語に対応した外国人にわかりやすい地図の普及を急ぐ必要があると判断。同検討会を15年度に設置し、外国人に分かりやすい地図記号や地名の英語表記方法などについて検討していた。
提供:建通新聞社