トップページお知らせ >中央ニュース

お知らせ

中央ニュース

2015/12/21

都市圏の揺れ長く 南海トラフ長周期地震動

 内閣府が設置した有識者による検討会は、南海トラフ沿いの巨大地震が引き起こす長周期地震動についての報告書をまとめた。3大都市圏で揺れの継続時間が長くなると推計。超高層建築物への影響については、「建物が倒壊するまでには強度的に一定の余裕があるのではないか」としている。報告書ではこれらの推計結果を踏まえ、個々の超高層建築物の詳細な検証と評価を行うこと、建物の揺れ状況をモニターできる機能を持たせることなどを対策として挙げている。
 ゆっくりと長く揺れる長周期地震動は、マグニチュード7以上でかつ、震源が浅い地震で発生することが多い。震源から離れた場所の超高層建築物に大きな揺れをもたらすこともある。東日本大震災の際には、首都圏などの超高層建築物が大きな揺れに見舞われている。
 推計に当たっては、過去に発生したマグニチュード8〜9クラスの巨大地震(1707年宝永地震、1946年昭和南海地震など)を踏まえた長周期地震断層モデルを構築。これに基づき、地表や超高層建築物への影響を推計した。
 この結果、地表の揺れる時間は、地盤の柔らかな堆積層が厚く分布している三大都市圏で長くなることが分かった。また、強震動生成域(断層面の中で特に強い地震波を発生させる領域)近くで揺れが大きい他、3大都市圏でもやや大きく傾向があるという。
 超高層建築物への影響については、地震動の速さが最も大きな値を推計した地域でも、「建物が倒壊するまでには強度的に一定の余裕があるのではないか」と推察している。室内では、背の高い家具類が転倒する可能性が高くなるとした。
 このため、超高層建築物の構造躯体について、想定すべき長周期地震動を用いてあらためて構造安全性を検証し、その結果に応じて改修などを行うべきとしている。室内対策としては、家具類の固定やエレベーターの地震時管制運転装置、震度のモニター機能が必要とした。
 報告書ではこの他、相模トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動の影響も懸念されることから、新たな検討会を設置すべきと指摘。また、他省庁による取り組みとして、国土交通省による超高層建築物の構造設計に用いる長周期地震動の波形策定、消防庁による石油タンクへの影響の精査や調査検討などを挙げた。

提供:建通新聞社