建設業労働災害防止協会(建災防、錢高一善会長)は、協会本部に「建設業におけるメンタルヘルス対策のあり方に関する検討委員会」(櫻井治彦委員長)を設置した。建災防はメンタルヘルス、産業保健、法律及び建設安全衛生の専門家で構成する委員会の意見を踏まえ、建設業の実態を踏まえ、建設業で働く人たちの心と身体を守るための対策を立案し、普及を図っていきたい考えだ。
労働安全衛生法(安衛法)の改正によってストレスチェックが義務化されるなど、建設業においてもこれまで以上にメンタルヘルス対策を推進することが急務となっている。
一方で、建設業における精神障害の労災支給決定件数は、他産業と比較しても、職種別にみても高く、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所割合は他産業に比べ低い状況にあるにもかかわらず、建設業の特性に留意した対策のあり方については、行政、関係機関ともにこれまで具体的な対策を示してこなかった。
このため建災防の委員会では、建設業における実態(対策の取り組み状況を調査。その上で▽雇用労働者の対策における事業者責任)▽建設現場での対策(下請け労働者を含めた統括管理)▽建設現場における対策の進め方(関係機関との連携)―などについて検討。建設業にとっての労働衛生の観点に立ったメンタルヘルス推進策を報告書にまとめる。
厚労省は、第186回国会で安衛法を改正。労働者の心理的な負担の程度を把握するため、医師や保健婦などによる検査(ストレスチェック)の実施を事業者に義務付け、15年12月1日から施行している(従業員50人未満の事業場については当分の間努力義務)。
しかし、建災防が建設労務安全研究会(労研)に委託して行った調査結果(速報値)によると、ストレスチェック制度が義務付けられることを「知っている」と回答した割合は、総合建設業が91・4%、専門工事業が63%で、改正安衛法の周知が決して十分とは言えない実態も明らかになっている。
委員は次の通り。
▽櫻井治彦(残業医学振興財団理事長)▽小山文彦(東京労災病院勤労者メンタルヘルス研究センター長)▽藤川久昭(青山学院大学法学部教授)▽諏訪嘉彦(東急建設執行役員住宅事業部長)▽細谷浩昭(鉄建建設安全品質環境部担当部長)▽古山善一(労働者健康福祉機構メンタルヘルス対策推進アドバイザー)
提供:建通新聞社