国土交通省は、測量から維持管理に至る直轄事業の全プロセスを情報化する新基準を2016年度から導入する。直轄事業で「I−Construction」と題した取り組みの一環として、生産性向上が遅れている土工で3次元データによる測量・設計・検査、自動制御されたICT建機の導入を拡大する。施工時期の平準化やプレキャスト化なども同時に進めることで、技能労働者1人当たりの生産性を5割向上させる目標を打ち出す。12月中旬に「建設現場の生産性向上検討委員会(仮称)」を立ち上げ、有識者の意見も踏まえて推進策を検討する。
公共事業では、建設投資の減少で労働力が過剰になったことを背景に、バブル崩壊後、生産性向上が見送られてきた。特に、技能労働者の約4割が投入される土工やコンクリート工で生産性が低い傾向にあり、トンネル工の1人当たりの施工量が過去50年で10倍に向上しているのに対し、土工とコンクリート工はほぼ横ばいで推移している。
国交省では、建設現場の労働力が過剰供給から不足する局面に入ったことに加え、過去3年にわたって公共事業費が安定的に確保され、建設業企業の経営環境に改善の兆しがみえているこの機会を捉え、抜本的な現場の生産性向上策を打ち出す。
生産性向上が遅れている土工では、施工段階で情報化施工が試行されているものの、導入率は13%にとどまるため、測量や設計などの上流段階からの3次元化を進める。土木工事施工管理基準をはじめとする基準類を15年度末までに見直し、16年度から導入範囲を拡大する。
測量はドローンによる写真測量などで短時間で高密度な3次元測量を実現。この3次元測量データと設計図面から施工量(切土・盛土量)を自動算出し、設計や施工計画に活用する。3次元設計データの活用で、自動制御されたICT建機も導入。発生率が全産業の2倍と高い死傷事故の低減にもつなげる。3次元測量データを活用した完了検査も行い、検査項目も半減させる。
コンクリート工では、鉄筋をプレハブ化したり、型枠をプレキャスト化するといった現場打ちの効率化を進めるとともに、プレキャストコンクリート製品の規格を標準化し、定型部材を組み合わせた施工を拡大させる。
施工時期の平準化に向けては、2カ年国債の活用などで4〜6月の閑散期と年度末の繁忙期を解消、資機材と人材の効率的に運用できるようにし、技能労働者の休暇取得や安定した収入などにつなげる。
12月中旬に初会合を開く検討委員会では、I−Constructionを進めるための基本方針などを15年度末に提言する。座長には小宮山宏三菱総合研究所理事長が就く。設備投資を伴う受注者や他の発注者にこの取り組みを普及させるための推進策も検討してもらう。
提供:建通新聞社