財務省は26日に開いた財政制度等審議会の財政制度分科会に、2016年度予算編成における公共事業分野の論点を示した。同省は国交省直轄事業の事業評価について「すう勢としては新規採択事業のB/C(費用便益分析)が横ばいないし低下傾向にある」と指摘し、新規の社会資本整備の集中と選択を徹底するよう要請。地方自治体に配分する社会資本整備総合交付金については、事業評価を要件化するとともに、予算の執行率に応じて次年度以降の配分額に差を付けることを提案した。
財政制度等審議会財政制度分科会は、個別分野ごとに予算編成の考え方を議論し、予算編成が大詰めを迎える年末を前に財務相に建議を提出する。
26日の会合では、国交省が13年12月にまとめた20年後の社会資本の維持管理・更新費(4・6〜5・5兆円)の見通しを「施設更新時には同等の機能で更新し、除却は行わないという前提で推計されたもの」と評価。人口減少や施設の利用状況を踏まえた集約的な更新で、費用の圧縮が可能との考えを示した。
一方、国交省の直轄事業などを対象とする新規事業採択時評価を取り上げ、社会資本が充足する中で「限界便益」が低下しているケースもあると指摘し、新規整備を選択することが一層重要になっているとした。
自治体の自由度を高めた総合的な交付金として、10年度に創設された社会資本整備総合交付金については、一定規模以上の事業で事業評価を要件化する必要性を提示。市役所に寄せられる道路整備の要望件数を減少させることを成果目標とするなど「一部の自治体が不適切な目標や評価指標を設定している」などとして、目標と成果指標を設定するための指針を国交省などが作成することを求めた。
また、同交付金をめぐっては「繰り越し」や「不用」などが多く、予算の執行率が低い都道府県も見られるとして、次年度以降の要望額や配分額に執行の実態を反映される枠組みを構築することも提案した。
14年度の労働力調査で、建設業就業者のうち技能労働者数が回復したことについては、いったん離職した高齢者が戻っていることが背景にあるとみて「楽観できる状況にはない」と分析。日本建設業連合会の若手中心に10年で90万人を入職させる目標に対しても「極めて高い目標」と実現に疑問を投げ掛け、新規入職者を確保できなければ「公共投資の供給制約になりかねない」と問題提起した。
提供:建通新聞社