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2015/08/26

【連載】加入率100%へ〜大詰め迎える建設業の社保対策(4)

【連載・建通新聞社】
加入率100%へ〜大詰め迎える建設業の社保対策(4)

■建設業 若者に選ばれる産業に

国交省木暮康二大臣官房審議官 国土交通省による対策の開始を契機に、建設業の長年の課題である社会保険未加入問題は解消に向かいつつある。「企業単位で100%、労働者単位で 製造業相当」との目標に向け、今後も新たな対策が講じられようとしている。社会保険未加入対策をはじめ、建設業の人材確保・育成を担当する国交省の木暮康 二大臣官房審議官に、同省が考える現在の課題と今後の展開について聞いた。

 ―国交省が社会保険未加入対策を進める意義をあらためて聞きたい。
  「建設業から離れた担い手を再び呼び込むことを目的に社会保険未加入対策を講じていることを理解してほしい。これからの公共事業や民間建築需要に応えるた めには『社会保険に加入しなくてもいい』としたこれまでも一部に残っていた意識を払拭しなくてはならない。景気が回復したので目先の人材を確保するという ことではなく、建設産業そのものが若者に選ばれるためには社会保険未加入問題の解消が不可欠だ」
 「この問題を解消することが、建設産業が担い手を確保するためのスタートラインに立つことになる。その上でようやく、他産業との人材獲得競争を始めることができるのではないか」

 ―これまでの対策の成果は。
  「2012年度から、建設業許可更新時の確認指導、社会保険の加入に関する下請け指導ガイドラインの制定、法定福利費を内訳明示した見積書(標準見積書) の活用、直轄工事における社会保険未加入企業の排除、といった対策を講じ、この問題に国交省が真剣に取り組むというメッセージを送っている。業界の努力も あり、加入率は年々上昇し、企業単位で約9割、労働者単位で約7割まで上昇した」

 ―15年度からは対策の浸透を図る全国キャラバン″を始めた。
  「当初の想定を超える2500人の自治体、建設企業などが集まるなど、この問題に対する関係者の関心の高さや意気込みがうかがえた。各会場では『社会保険 に加入する意識は高まっているが、標準見積書の作成方法が分からない』『標準見積書の提出に取り組んでいるので、元請け企業にはしっかりと法定福利費を流 してもらいたい』という声が聞かれ、対策前との意識の変化を感じることもできた」

 ―今後の方向性は。
 「元下間で法定福利費を確実に移 転させる手法として『事後精算』などさまざまな可能性が考えられるが、まずは商慣習上の課題を整理したい。法定福利費の『別枠支給』についても、公共工事 に適用するためには会計法上の課題があるとの指摘もあり、まずは検討することが大事だ」
 「例えば、事後精算などの手法で、法定福利費を正確に移 転させるためには、誰が、何時間、その現場に従事したかを元請けが把握する必要がある。そのために期待されるのが就労履歴管理システムだ。8月に立ち上げ た官民コンソーシアムを中心として、システムの構築を急ぎたい」

 ―標準見積書を提出する下請けへの支援は。
 「全国キャラバンでも、法 定福利費の算出方法や標準見積書の作成方法が分からないという声が、多くの下請け企業から寄せられた。15年度の下半期からは、中小の専門工事業者に対す る建設業会計・経理実務に関する研修を全国10カ所で開き、標準見積書の作成能力を向上させたい」