在任約2年9カ月に上った太田昭宏前国土交通相が退任し、同じ公明党の石井啓一氏が新たな国交相に就任した。7日、就任会見に臨んだ石井国交相は「建設業が先の見通しを立てられるよう、長期的に安定した仕事を確保することが重要」と、今後の社会資本整備の方向性について言及。また、安倍首相から「地方創生の起爆剤となるよう、国土強靭(きょうじん)化や地方を結ぶ交通網の整備に取り組むよう指示を受けた」などと明かした。
就任に当たり「国交省はわが国の国民経済に関係する幅広い分野を担当している。来年1月には発足後15年の節目も迎えるため、これまでの実績をしっかりと引き継ぎ、責任を果たしていきたい」と意気込みを示した。旧建設省を退官後、22年ぶりに大臣として返り咲いた。「新人のつもりで戻ってきた」と決意を新たにする。
安倍首相からは、国土強靭化や地方の交通網整備に加え、3世代の近居・同居を促進する住宅政策を検討、実施するよう求められた。インフラシステムの輸出については「特にインド、東南アジアへの輸送システムの輸出に向け、体制を強化することを指示された」という。
社会資本整備の担い手である建設業については「東日本大震災の復興需要や経済の活性化で投資が増えているが、少し前を振り返れば長年にわたる公共事業費の減少で、業界全体が疲弊してしまっていた」とした上で「そうした市場環境の中で、新規採用を抑えたり、若手を育成できないといった弊害が起きていたのだろう」と分析する。
こうしたことから「長期間にわたって仕事量を確保することで、建設業に先の見通しを持ってもらい、人材育成、設備投資、技術開発に動いてもらいたい」と、太田前国交相が打ち出した方向性を踏襲する意向を示した。
9月に発生した関東・東北豪雨で最も被害が大きかった茨城県常総市に隣接するつくば市在住。現場に足を運び「災害が起きる前に鬼怒川が決壊すると思っていた住民はだれもいなかった」との声を聞いた経験から「住民の防災意識を高めて迅速な避難を促す体制を強化しなくてはならない」と強調した。
提供:建通新聞社