2015/09/24
【連載】IT時代の打音ハンマー インフラ検査技術のいま(下)
【連載・北海道建設新聞社】
IT時代の打音ハンマー インフラ検査技術のいま(下)
■ロボ活用に注目集まる 建設業界の技術者不足で
インフラ検査・維持管理展では、学識者のほか、政府や国土交通省関係者らを講師とするセミナーも数多く企画。人手不足が深刻化する中、ロボット活用の本格化や、官民連携による防災の必要性などの方向性が示された。インフラ維持管理技術の今後や、国土強靱(きょうじん)化の将来像を学ぼうと、どの会場も定員を上回る受講者で埋まった。
国交省公共事業企画調査課施工安全企画室の岩見吉輝室長は、同省が進めるインフラ用ロボットの開発に関する施策の動向を説明した。
インフラ用ロボットは、建設関連業界全体の人材不足に加え、インフラを維持管理する自治体の技術者の不足からニーズが高まっている。
同省は経済産業省と連携してインフラ用ロボットの開発を進めており、14年に@橋梁維持管理Aトンネル維持管理B水中維持管理C災害調査D災害応急復旧―の5分野で開発者を公募した。
国交省による現場検証では、水中維持管理用のロボットで期待した性能を満足したものがあったものの、他の分野ではなかった。「現場検証の結果や浮上した課題を開発者へフィードバックし、さらなる技術向上に役立ててほしい」とした。
一方で、応募状況を見ると「ゼネコンやコンサル業と、シーズを持っているメーカーや大学の機械系、電気系学部などが組んで応募するケースが目立つ」と、参入する事業者の幅が広がっている点に着目。
「ゼネコンなどが(ロボット開発に関する)コーディネーターとしての役割を担う良い流れができてきている。今後も促進したい」と期待を寄せた。
内閣官房参与の藤井聡京大大学院工学研究科教授は「国土強靱化論―日本を強くしなやかに」と題して講演。最近の国土強靱化に関する動向として、都道府県など地方自治体単位での「地域強靱化計画」を立案するケースが増えてきたことに言及した。
地域強靱化を進める上では、「行政と民間企業との連携が不可欠」と述べ、ある地域の私立学校の防災拠点化の例を紹介。民間企業は地域貢献の観点からも防災に関する設備投資への意欲が高いとし、民間の設備投資を促すことで、「行政側も少ない負担で、かなり立派な防災拠点を整備できる」とメリットを強調した。
その上で地域強靱化計画を立案する立場である地方自治体の担当者には、「いつまでにどういった防災設備をどの程度整備するかといった重要評価指標(KPI)を含め、強靱化にはどの程度予算が必要かを自由闊達(かったつ)に盛り込んでほしい」と要請。
各地の実情を反映した計画が出そろうことで、政府の予算案にも説得力が増すなどの利点があるといった私見も述べた。(この連載は経済産業部の鳴海太輔が担当しました)