「インフラの町医者をめざして」と題したパネルディスカッションでは、地方創生のために地域建設業ができること、なすべきことについて意見を交わした。パネラーは国土技術研究センター国土政策研究所長の大石久和氏、長瀬土建(岐阜県)社長の長瀬雅彦氏、深松組(仙台市)社長の深松努氏、内山建設(宮崎県)社長の内山雅仁氏、日本青年会議所2015年度建設部会長の飯田誠次郎氏(東京都)。コーディネーターは、建設トップランナー倶楽部代表幹事で慶應義塾大学特任教授の米田雅子氏が務めた。
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林建協働に挑む長瀬氏は地方創生の最終的な目標として、「幸せに暮らしていける家族が地域に増えること」を掲げた上で、「われわれの取り組みは、まさに地方創生そのもの。異業種に参入する場合には、地域の実情を見極め、参入した先がいかに進化するかを考えることが重要だ。古い考え方を捨て去り、何をすれば良いかを考えれば、地方創生は必ず成し遂げられる」と強調した。
東日本大震災の経験を全国に発信している深松氏は、東北の現状について「宮城県内では復旧・復興事業の発注がピークを過ぎ、今後に不安を持っている者が多い。復興需要が無い秋田などはさらに深刻な状況。地域に建設業や職人がいなくなれば、地域が破綻してしまう」と危機感を示しながら、「建設の仕事は、自衛隊などと同じ国防だ。将来、被害が25兆円とも想定される南海トラフ巨大地震などが起こったら、誰がこの国を守るのか。今のうちから準備を進めておかなくてはならない」と訴えた。
金融機関に勤めた経験を持つ内山氏は、建設産業に対する理解が進まない要因として「インフラは使わないと存在価値が分からない。建設会社の価値も同様で、一般の人々は『作者』までには意識が回らない。建設業は背中が見えない構造にある」点に言及。一方で「現場監督や職人には、自分たちは一生懸命やっているから分かってもらわなくてもいいとの考えがまだ残っている。情報発信の大切さはもちろんだが、いかに地に足の付いた活動を進めていくかが問われる」と指摘した。
日本青年会議所建設部会の飯田誠次郎部会長は「地域建設業の経営者にとって、人材確保・育成が最も大きな課題」といった会員の意見を紹介し、「私は父親の背中を見て、同じ建設の仕事をしたいと思った。今度はわれわれがそうした背中を見せることが重要。若者に建設業の魅力を伝えるとともに、イメージアップに力を尽くす」と力を込めた。
国土交通省技監を務めた大石氏は、「どこにいっても同じものがあることに価値を見いだしていた時代から、ここにしかないものを誇りとする時代へと、社会のフェーズが変わり始めている」との認識を示しつつ、「それぞれの地域が持つ資源をフル活用して雇用を守る地域建設業は、地方創生の要。地域社会の基幹産業として存在し続けてほしい」と総括した。