第3部の「地域の安全・安心をめざして」では、「宮古市復興とICTの取り組み」と題して刈屋建設(岩手県)の向井田岳氏、「災害復旧と情報発信」と題して礒部組(高知県)の宮内保人氏、「震災と復興を経験した兵庫からの報告」と題して日本青年会議所の石井享氏が事例発表した。
■宮古市復興とICTの取り組み
刈屋建設 向井田岳氏
刈屋建設(宮古市刈屋)の向井田岳社長は、岩手県建設業協会の副会長も兼務。東日本大震災を経験し、協会として県内13支部に緊急時の情報伝達の即戦力となる機器を配置。「震災の経験や反省に基づくマニュアル化は大切だが、現場での判断や行動が制限されないようにすべき」と話す。
自社のICTへの取り組みとして、情報化施工チャレンジ工事への挑戦を紹介。「課題はあるが、多くの可能性を秘めている。ICTを道具として使いこなす人材育成が大切」との考えを示した。
「復興後を見据え、地元建設業者や人員、重機などの必要数の議論は必要」と問題提起。「人材・資機材を備え、地域から信頼・期待される建設業者として、真に必要な技術や技能を地域に残していく役割が求められている」と訴えた。
■災害復旧と情報発信
礒部組 宮内保人氏
高知県北川村はゆずの産地。国道493号で出荷するが、2011年7月の台風6号で寸断。礒部組は、県から緊急工事を依頼され、宮内保人技術部長が担当。「現場のことを情報発信しよう」と誓った。
広報紙を2週間に1度発行し、現場情報をブログで伝え続けた。同年は台風が多く、現場では計6回も崩落が発生したが、3カ月後に無事開通。作業員や自らも崩落に巻き込まれそうになったが、開通後のブログに「ゆうこ」さんから感謝のコメントが送られた。
「情報発信を続けたことでコメントが送られてきた。一人一人が現場で『ゆうこさん』を探すことが大事。地域に必要とされる建設業という自覚があるのなら、その存在価値は自分たちで創り出さなければならない」と訴える。
■震災と復興を経験した兵庫からの報告
日本青年会議所建設部会 石井享氏
日本青年会議所建設部会の石井享災害対策室長は、今年3月に開かれた同部会3月度の兵庫定例会「震災と復興を経験した兵庫から伝えたい想い」について報告した。
阪神淡路大震災から20年が経過した節目の年。当日は、最も被害が大きかった神戸市の当時を振り返りながら、災害時の応援協定や若年従事者の減少、人手不足などに関しパネルディスカッションを行った。
パネリストから、応援協定に関しては、震災から20年が経過し危機感のなさが指摘され、「協定の中身を掘り下げるべき」との発言があったことを紹介。また、建設業の高齢化と若年従事者の減少についても言及。
若年従事者の獲得に対しては「建設業の魅力を若い世代の感性で伝えていくことが大事である」と強く訴えた。