第2部の「建設業の本業を磨いて地方創生―新技術、担い手の確保・育成」では、「暗渠の長寿命化のロボット」と題し川崎建設(北海道)の梅崎務氏、「建設人材の育成を広報」と題して小野組(新潟県)の小野貴史氏が事例発表した。
梅崎氏は新設に対して格段にコストを低減でき、農地の土壌構造を破壊することなく機能を回復することができる暗渠排水管の洗浄サービスのニーズは高まるだろうと期待した。
一方小野氏は、技で生き抜く建設職人をPRするホームページやパンフレットを作成し、建設職人は手に職をつけて独立できる職業であり、誇りを持って働ける魅力的な仕事であることを真正面から訴えることが重要と力説した。
■暗渠の長寿命化のロボット
川崎建設(北海道京極町)研究開発技術員 梅崎務氏
北海道の道央に本社を置く川崎建設は、医療装置の内視鏡のような農業用暗渠排水管洗浄ロボットを開発し、2007年からサービスを始めた。
農業基盤整備の造成工事を通じ「埋められた暗渠管が大量に出てくる。内部の泥を取り出せばまだ使える」と感じたのが開発のきっかけだ。
作業は3人で進める。先端の小型カメラで管内をモニターしながら枝分かれした暗渠に入り、高圧洗浄ポンプで洗浄水を噴射し泥を取り除く。
土中から余分な雨水を抜く暗渠は内部に泥が詰まると再敷設される。道内に63万fある暗渠のうち、45万fが寿命となり毎年1万hfが新たに埋められている。
梅崎研究員は「農業をめぐる問題が山積しているが、暗渠メンテナンスは補助金がないのが現状」と問題も提起した。
■建設人材の育成と広報
小野組(新潟県胎内市)取締役社長 小野貴史氏
127年続く小野組6代目の小野社長は「建設業は地域の問題解決業」と自負している。大学でも講義をし、若者に地域に根差す人生設計を提唱している。
学生に「都会に余りなくて、田舎に一杯あるものは何か」と問う小野社長。答えは「地域の課題」だが、あくまで否定的ではなく「自分の力を試したかったら、田舎に来てみたらどうだ」と誘う。
地元の廃校をLEDでイチゴ栽培する植物工場に再生するなど自身が精力的だ。高齢化や少子化、農家の収入減など地域の現状を認識した上で、「他産業とコラボレーションすると必ず山は乗り越えられる」と実践で証明している。
「同志となる若者をゲットし、一緒に解決に向かうのは中小企業経営者の醍醐味(だいごみ)」と豪快に笑った。