建設業振興基金の内田俊一理事長は、21日に行われた全国高等学校土木教育研究会(全土研)が主催する記念講演で「社会が若者を受け入れる仕組みが傷んでしまっている。建設産業が他に先駆け、この仕組みの再構築に取り組まなくてはならない」と訴えた。聴講する教職員らに対し「各地域でシームレスな教育訓練体系を構築したい。学校教育の現場からもアプローチしてほしい」と協力を呼び掛けた。
高校の土木系教育に携わる教職員でつくる全土研が、20年ぶりに開かれた全国大会で、内田理事長と土木学会の廣瀬典昭会長が記念講演を行った。
内田理事長は、高校を卒業した若者の7割が正社員として就職しないか、3年以内に早期離職する原因が「若者が置かれている職場環境にあるのではないか」と指摘。建設業に限らず、企業が現場の人員を削減したことで「現場で人を育てる姿が消えてしまった」と問題視した。
さらに「雇用主と働く若者に相互不信が生まれている」とも指摘。雇用側が教育の機会を放棄しているために、若者も一生を預ける意識がなくなり「就職しても技能を習得する意欲を失っているのではないか」と続けた。
こうした状況を打開するため「個社では難しい教育訓練を地域ぐるみで進める必要がある」として、振興基金が進めている建設産業担い手確保・育成コンソーシアムの地域連携ネットワークの取り組みを紹介。教職員らに「まだまだ取り組みが進んでいない地域もある。学校側からも働き掛けを強めてほしい」と訴えた。
土木学会の廣瀬会長は「次代を担う若手技術者には、先達がつくりあげた社会インフラをさらに次の世代につなげる使命がある」と述べた上で「若者が誇りを持って土木事業を成し遂げる志を抱けるよう、考える機会を教育の現場で与えてほしい」と話した。
提供:建通新聞社