2015/08/18
改正品確法と総合評価 法の理念の具現化へ労を惜しむな(建通新聞社・建滴)
「発注関係事務の運用に関する指針」、いわゆる運用指針が策定されたことしは、公共工事の品質確保の促進に関する法律の一部を改正する法律(改正品確法)の本格運用元年と位置付けられており、新たな施策が次々と展開されている。関東など各地方整備局も、運用指針などを踏まえて総合評価落札方式ガイドラインを改定し、その適用を始めたところだ。
総合評価落札方式は、2005年施行の品確法に併せて、公共工事の品質確保のための中核的な取り組みとして導入されたものだ。価格に加え、技術提案の優劣を総合的に評価する同方式は、今や多くの発注機関で採用されている。
だが、これまでは価格の多寡で落札者が決まる傾向にあったと言えよう。施工能力評価型などでは、工事成績よりも過去15年の同種工事の実績の配点が高い。過去の同種工事の実績は、参加者間で差がつきにくいことから、落札者が価格で決まる要因の一つになっていた。
こうした状況を踏まえて、15年度からスタートした新たな取り組みの一つが「成績評定重視型」の総合評価落札方式だ。過去に高い工事成績を収めた企業を評価しようというもので、過去の同種工事実績が工事成績評定よりも優位に評価される傾向を改善するための措置と言える。
ただ、工事成績を重視することで、直轄の実績や成績がない企業の新規参入が困難になるとの懸念を持つ向きもあるし、過去の実績が豊富な企業に受注が偏るおそれがある、との指摘もある。直轄工事を受注した実績がない企業の場合、直轄工事の総合評価落札で工事成績の評価がゼロ点となるため、技術評価点が相対的に低くなり、落札が難しくなってしまう。
こうした懸念を踏まえ、直轄工事では自治体の工事成績を評価対象とした「自治体実績評価型」も試行段階に入っている。国交省と自治体との工事成績実施要領のバラツキは、自治体の成績を補正して評価する。
工事成績は、公共工事の品質を確保するための大切な「ものさし」だ。これが発注機関によってバラツキがあるのは、決して望ましくない。国交省がまとめた実態調査によると、都道府県・政令市の4割、中核市の7割が国交省と異なる工事成績実施要領を使用している。
工事成績評定点の平均値にも当然、大きな差が生じている。都道府県・政令市の発注工事(12年10月〜13年9月の完了工事)では、最高87点、最低65・1点と差がある。
こうしたことから、運用指針は、発注者間が連携した上で、工事成績実施要領の標準化や工事成績の共有化に努めることを求めている。
公共工事の品質確保や、担い手の中長期的な育成・確保などを目的として改正された品確法。総合評価落札方式はこれらを実現するための重要なツールだ。法の理念を具現するため、かつ実状に則したものとするために、今後も改善の労を惜しむべきではない。