第1部のパネルディスカッションでは、米や酒づくりなどを通して農商工連携に取り組む愛亀(愛媛県松山市)の西山周社長、介護・医療分野へ参入した美保テクノス(鳥取県米子市)の野津一成社長、国土技術研究センターの谷口博昭理事長、第5回建設トップランナーフォーラムの幹事長を務めた住田建設(愛知県津島市)の住田高寿社長の4人をパネリストに迎え、北海道建設新聞社の荒木正芳社長のコーディネートで「地方創生のトップランナー・10年の軌跡とその未来」と題して意見を交わした。
10年間の建設トップランナーフォーラムについて西山社長は「スピード感に圧倒されてここにいる。地域の建設業の力強さに勇気をもらった」。野津社長は「この10年間、建設業は逆風を受けたが勇気づけられたことが一番の思い出」と振り返った。フォーラムが果たしてきた役割について谷口理事長は「インフラの町医者とか農林水産業や介護との連携など、具体的な成果を挙げていることに期待が寄せられている」とした。
異業種への取り組みについて西山社長は「発注が控えめになる4月から10月に無農薬無化学肥料の精密農法で米作りを始めた。農業は地域のユーティリティ性が高い産業だと思うので、農業を軸に経営資源を有効に使いたい」。野津社長は「介護事業は介護保険法が改正されて始めた。経営もさることながら、立地や建物をどうすればよいかというノウハウがあったので、トップランナーというよりは建設業にしがみついて何とかやってきた」と説明。谷口理事長は「地域の暮らしや産業に何が必要かを考える必要がある。それは地域によって様々だ。トップランナーがやっている成功事例をそのまま真似るのではなく、プロセスや精神をうまく学んで生かして、地域にあった形で公共事業と他産業を連携させることが重要だ」と強調した。
住田社長は公共事業削減の厳しい時代を振り返り「日本青年会議所の建設部会は全国組織で、会員の交流を通して厳しい時代には助け合い、悩みを分かち合っている。震災の時も真っ先に物資などを送り、みんなで助けに行った。全国組織を生かして本当に疲弊している地域をみんなでカバーしたい」と述べた。
今後について谷口理事長は「国土強靭(きょうじん)化と地方創生をセットで考え、そこに建設業がどのような役割を果たすかだ。地方の強靭化、地方の安全・安心と雇用。仕事と経済を支え、両立できるのが地方の建設業だ」。西山社長は「フォーラムを通じてもっと全国に発信することができる」。野津社長は「この10年間で、いろんな方が成功も失敗も経験したと思う。失敗を検証することも重要だ」と述べた。