国土交通省は6日、現場の労働者の技能と経験を見える化する「就労履歴管理システム(仮称)」の構築に向けた官民コンソーシアム(座長・野城智也東京大学副学長)の初会合を開いた。建設業団体、学識経験者、行政などが集まり、システム実施主体の選定方法、費用負担などに関する議論を始める。今後設置する作業グループで、技能労働者、下請け、元請けなどがシステム構築で得られるインセンティブなどを整理し、15年度末までに中間報告をまとめる。国交省は、社会保険に未加入の作業員の現場入場を認めないとしている17年度までに、システムを本格運用させたい考えだ。
冒頭で谷脇暁土地・建設産業局長は「就労履歴管理システムの必要性は以前から指摘されていることだが、一方で立場・地域によって懸念もあると思う。そういった中でも、今後の建設業の発展に貢献できるよう、持続可能なシステムを目指していきたい」とあいさつした。
国交省が考えている就労履歴管理システムは、大手ゼネコンを中心に普及が広がっている既存の労務安全管理システムに登録されている労働者の現場経験データを統合するためのもの。現場の入退場管理がシステム化されることで、社会保険加入状況の把握、現場の安全管理の徹底、技能労働者の適正な評価と処遇改善といった効果が得られるという。
初会合では、出席した建設業団体などから「システム構築で得られるインセンティブを技能労働者、元請け、下請けが感じられるようにしなければ、普及は難しい」といった意見があった。また、一部の民間工事を除くということでなく「業界全体が参加しなくては機能しない」との指摘もあった。また「マイナンバーとシステムが連携する可能性についても検討すべきだ」という。
会合では、元請け約70社・協力会社約2万9000社が加入する「グリーンサイト」を運営するMCデータプラス、ハウスメーカー・工務店などが加入する労務安全管理システムの運営主体であるコムテックス、2011年に発足した就労履歴登録機構の3者に既存サービスに関するヒアリングも行った。
今後設置する作業グループは、情報の閲覧主体の範囲、システム運営主体の決定方法、登録料・利用料の試算、元請け・下請け・技能労働者ごとのメリットと負担について検討し、15年度中にコンソーシアムがまとめる中間報告に反映させる。国交省では、中間報告を踏まえ、16年度前半にシステムの全体設計、16年度後半に試行運用、17年度の本格運用を目指したい考えだ。
コンソーシアムに参加する学識者と団体は次の通り。
【学識経験者】
▽野城智也東京大学副学長▽蟹澤宏剛芝浦工業大学教授▽大森文彦東洋大学教授
【団体】
▽日本建設業連合会▽全国建設業協会▽全国中小建設業協会▽建設産業専門団体連合会▽全国建設産業団体連合会▽住宅生産団体連合会▽全国建設労働組合総連合▽建設業振興基金
【オブザーバー】
▽東日本建設業保証▽西日本建設業保証▽北海道建設業信用保証▽厚生労働省
提供:建通新聞社