日本建設業連合会(日建連、中村満義会長)は、国土交通省が8月上旬にも立ち上げる官民コンソーシアムで検討される「就労履歴管理システム」に関して、日建連が考える基本コンセプトを整理した。具体的には、約350万人の建設技能者全員に対する「技能者カード」の▽発行▽カードリーダー▽データベース―の3システムと、これらを結ぶ通信機能で構成。国交省が認定する単一の主体が運営を担い、競争原理の下で選ばれたメーカーがシステムの構築・運用・改善に当たる。28日に初会合を開く「就労履歴管理システム推進本部」(本部長・村田誉之大成建設社長)で具体的な方針を定めて官民コンソーシアムに提案することにしており、今秋にも中間報告をまとめる。
日建連は就労履歴管理システムについて、建設技能労働者の技能・資格や工事現場での就労履歴を蓄積し、雇用・賃金・社会保険などの面で適正な処遇を確立するための基礎的インフラと定義した。建設現場に入場する技能者の実態を的確に把握し、合理的かつ効率的な現場運営や安全管理の徹底にもつなげるとしている。
労務管理などに関する既存システムの活用を前提とせず、中小建設業者や専門工事業者にも極力配慮した「新たなシステム」の構築を提案する考え。
推進本部による具体的な方針の策定に当たっては、システムの▽構成▽必要な機能▽運営主体▽費用負担▽技能者登録の窓口▽登録する情報の範囲や更新期間▽本人確認の方法▽技能者情報にアクセスできる者の範囲▽個人・企業情報の保護対策▽サイバーセキュリティー▽普及促進方策―などを検討課題に挙げた。官民コンソーシアムによる検討の先を見据え、システム構築の準備組織や費用負担の在り方についても早急に検討する。
中間とりまとめの時期を今秋としたのは、社会保険加入の目標年度である2017年度(建設業許可業者の100%加入、工事現場からの未加入者の排除)のシステム運用をにらんだ対応だ。
28日の初会合は、下部組織の幹事会との合同会議とする。
中村会長は23日の理事会後の会見で、民間建築工事に携わる建設技能者の社会保険加入率の低さを引き合いに出しながら、今回のシステムが「特効薬となって、土木・建築に限らずしっかりと(状況が)把握できれば、彼らの待遇改善につながる」との見方を示した。
一方、国交省が立ち上げる官民コンソーシアムには▽日建連▽全国建設業協会▽全国中小建設業協会▽建設産業専門団体連合会▽全国建設産業団体連合会▽住宅生産団体連合会▽全国建設労働組合総連合▽建設業振興基金―の8団体が参加。学識経験者として野城智也東京大学副学長、蟹澤宏剛芝浦工業大学教授、大森文彦東洋大学教授が名を連ね、東日本・西日本・北海道の保証会社と厚生労働省もオブザーバーを務める。作業グループも設ける。
初会合ではMCデータプラス、コムテックス、就労履歴登録機構、建設用振興基金が既存サービスを紹介する見通し。
提供:建通新聞社