国土交通省は、建設業の重層下請構造に関する実態調査を開始する。行き過ぎた重層化が生産性の低下や労務費へのしわ寄せを生むという認識に立ち企業単位″ではなく現場単位″で工種・規模・地域別に施工体制や下請け次数を調査する。調査で重層化の実態を把握した上で、不要な下請け契約を回避するための効果的な方策について検討する方針だ。
建設生産システムにおける重層下請構造は、工事内容が高度化したことに伴う専門化・分業化、工事量の増減と繁閑に対応する必要性などから、各企業が繰り返し下請け契約を結ぶ結果として形成された。
国交省は、建設産業の特性から、一定の下請け構造は不可避であるとしながらも、一部の10次を超えるような行き過ぎた″重層化が、間接経費の増加による生産性の低下、労務費へのしわ寄せ、施工責任の不明確化、といった問題を生じさせていると認識。建設現場の生産性を向上させる観点から、重層下請構造の改善に向けた実態調査を行うことにした。
重層下請構造について、国交省はこれまでも下請け次数の実態把握などを目的とする調査を行っているが、そのほとんどが企業単位でヒアリングなどを行うもの。今回の調査では、建設工事の施工体制に関するデータを現場単位で収集・整理し、工種・規模・地域ごとに平均的な下請け次数や専門工事などの内容を把握する。調査を現場単位とすることで、重層化がより進んでいる民間建築現場の実態を把握する狙いがある。
2015年度末までに調査を終え、建設業界などと調査結果を共有、重層下請構造の改善に向けた方策の検討につなげる。重層下請構造の改善をめぐっては、すでに新潟県、京都府、福井県などが、下請け次数制限などの措置を一部の工事で実施しており、自治体とも調査結果を共有し、関係者一体で対策を検討する環境を整える。
提供:建通新聞社