環境省は、ユニバーサルデザイン(UD)化を重点的に進める「国民公園」と「国立公園」を定め、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに両公園への来訪者をトータルで「年間4億人に引き上げる」とした目標を掲げた。有識者から得た具体的な助言やアイデアを、短期・中長期、ハード・ソフトそれぞれ二つの視点から整理、これからの公園管理・運営に生かしていく方針だ。
同省は、国民公園・国立公園におけるUDの推進を図るため、高橋ひなこ環境大臣政務官をトップとするUDプロジェクトチームを設置。ミライロの垣内俊哉代表取締役社長、アクセスインターナショナルの山崎泰広代表取締役社長、日本オストミー協会の川村正司理事、ユニバーサルデザインアドバイザーの松森果林氏らをアドバイザーとして迎え、新宿御苑やUD先進施設の視察・懇談などを実施した上で、国民公園・国立公園におけるUD化の取り組みについてまとめた。
例えば、多目的トイレについては、便座に背もたれがないと、座位が保ちづらいなどと指摘。短期的な対応としては便座の背もたれの設置やごみ箱を車いす使用者が使えるものへの入れ替え、中長期的には手すりの改善や低い位置まで見える大きめの鏡の設置―などを求めた。
サイン類については、中長期的に▽標識類、園入口の情報案内板などの更新▽水飲み場のサイン、勾配を示す標識などの設置▽現在地把握に必要な位置番号を園路沿いの標識に記し、対応したマップを作成する―などの必要性を指摘した。
同省はUDの推進に向けて整理した取り組みのうち、短期的な対応については遅くとも年度内から着手。中長期な対応を要する内容のものについては、予算や人的な措置に配慮しつつ、機会を捉えて実施していく。
環境省が管理運営する「国民公園(皇居外苑、京都御苑、新宿御苑)」は年間約1400万人(15年)の利用者があり、国立公園(32公園)には年間約3億5000万人が訪れ、地方の貴重な観光資源ともなっている。政府の観光立国推進閣僚会議が決定した「アクション・プログラム2015」は、14年に政府が新たな目標として掲げた「訪日外国人旅行者数2000万人」の早期達成や、「2000万人時代」を万全の備えで迎えることを表明している。
提供:建通新聞社