東京都内で6月に開かれた全国中小建設業協会の総会後の懇親会に招かれた太田昭宏国土交通大臣は、「防災・減災」「老朽化」「メンテナンス」「耐震化」などをキーワードに挙げ、「今後、地域建設企業の果たす役割はますます高まる」と指摘した。その上で、「超高齢化・人口減少社会を迎える中、社会インフラを長寿命化、強靭(きょうじん)化しつつ、まちをコンパクトに再構築することが地方の課題である。地方創生の主役は皆さんです」と強調した。
国土交通省は、「インフラ長寿命化基本計画」に基づき、昨年5月に「インフラ長寿命化計画(行動計画)」をまとめ、インフラの持続的な機能発現を実現するメンテナンスサイクルの構築を打ち出した。そして、対象となる全ての施設については、2020年度までに個別施設計画を策定するよう求めた。予算不足、人不足、技術力不足の三つの不足≠ノ悩まされ続けている地方公共団体にとってこの要求は荷が重いし、深刻さを増す担い手の確保に向けた入札契約制度の見直しなど、取り組むべき課題も少なくない。
これらの課題は、小規模の地方公共団体ほど重くのしかかる。そこで欠かせないのが、管理者間の連携強化だ。地方公共団体が単独でできないなら、予算やマンパワー、技術力など、国が側面支援するのは、「よどみない行政サービスの提供」の観点からも必要な対応だろう。官民によるパートナーシップはもちろんのこと、官官(国と地方公共団体)のパートナーシップもそれ以上に重要だ。管理者が個別計画を策定し、切れ目のない事業執行を実現しなければ、トータルコストの削減、メンテナンスサイクルの構築をうたっても、それは発注者としての責任を果たしたことにならない。場合によっては、受益者である市民の損失すら招きかねない。
15年度の公共事業費約6兆円は、予算全体の6%を占める。歳出削減の方向性から、新規の社会資本整備に回る予算は減少傾向にある。一方で、30年ごろを想定した社会資本の維持管理費は、今年度の公共工事費とほぼ同額の6兆円に上るとの国の試算もある。生活と産業を支える社会基盤の長寿命化に加え、国際競争力の向上を目指す港湾や空港などの機能拡充も喫緊の課題であることを考え合わせると、この分野の予算削減は理解し難いし、残念でならない。
7月に閣議決定される予定の国土形成計画と国土利用計画の改定案では、地方都市圏について、「重層的で強靭(きょうじん)、コンパクトで高次な都市機能の確保」を掲げるとみられる。地場の建設業は、地方創生の基盤を支える基幹産業の一つだ。国は官官のネットワークやパートナーシップを政策的に支援し、将来の維持・更新を見据えた新しい公共サービスの形をつくり、一日も早く軌道に乗せることに全力を挙げてほしい。
提供:建通新聞社