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2015/06/29

土木学会の第103代会長に就任した廣瀬典昭氏 「持続可能な社会の礎を築く」

 土木学会は自らの活動目標であり、行動計画でもある「JSCE2015」の中で、「あらゆる境界を開き、市民生活の質向上を目指す」とうたっている。学会は刻々と変化する社会・経済環境の変化とどう向き合い、自らの役割をどのように発信していくのか。第103代会長に就任した日本工営の廣瀬典昭会長に聞いた。
 
 ―「あらゆる境界を開く」とは、どういう意味なのか。
 「学会は創立100周年に合わせて、14年度に『JSCE2015』を策定した。ここで掲げた4項目の中期重点目標と、当面、5年間で取り組むべき10項目を重点課題としている。100周年を迎えた14年には、学会の長期的目標として『あらゆる境界をひらき、持続可能な社会の礎を築く』」を宣言した。これには二つの意味がある。一つは、土木技術がこの国の地域に暮らす人たちに対してどのような役割を果たせるのか―という意味。もう一つには、われわれの土木技術が世界で活用されるような仕組みを創っていこう、という決意が込められている」
  
 ―いま学会に求められている役割は何だろう。
 「われわれを取り巻く社会・自然環境は急速に変化している。インフラの維持管理はもちろんのこと、懸念される巨大災害への備えや、地球規模の気候変動などへの対応も学会の重点課題だ」
 「これからのまちづくり、あるいは地方創生がうたわれている中で、土木の役割が問われている。これに東京オリンピック・パラリンピックのような大きなイベントがからんだとき、地方が地方の魅力を発信していくために土木には何ができるのか―ということも考えていきたい」
 「われわれ自身が海外でビジネスしていくことを考えたとき、われわれが培ってきた技術・知見の移転が必要になってくる。国内の国際化も含めて、グローバルデザインの具体化を指向していくべきだろう」
 ―これからの土木をけん引していく人材の確保・育成に、学会はどうコミットしていくのか。
 「若い人が自分で考え、自分で行動する、そうした場をつくることが土木学会の学会たるゆえんだ。土木事業は一個人の力で成し遂げられるものではない。多くの人の知恵と協働が欠かせない。土木学会は、年代や職域、性別の異なる多くの人たちの集合体。会員が一丸となって次代を担う土木技術者を育成していかなければならない。だが、その一方で、人材の確保・養成は学会だけで成し得る問題ではない。土木に関わる人と組織が『土木界全体の問題』として考え、取り組んでいかなければならない」
 <略歴>
 1968年3月、東京大学工学部土木工学科卒。同年4月、日本工営入社。74年6月、米国スタンフォード大学大学院土木工学課程修了。08年6月、同社代表取締役社長、14年同社代表取締役会長に就任、現在に至る。静岡県浜松市出身。1945年7月30日生まれの69歳。

提供:建通新聞社