国土交通省は、法定福利費を内訳明示した見積書(標準見積書)の作成手順をまとめた。下請け企業が適切な額の法定福利費を元請け企業(直近上位の注文者)に請求できるよう、法定福利費の対象範囲や算出方法を解説している。標準見積書のひな形・作成例は、すでに専門工事業団体がつくっているが、国交省として初めて全職種共通の作成手順を示した。26日から同省ホームページで公開するとともに、29日から始まる社会保険未加入対策の地方説明会の参加者らにも説明・配布する。
国交省は、ことし3月に「社会保険の加入に関する下請け指導ガイドライン」を改訂し、元請けから下請けへの見積もり条件として、法定福利費の内訳明示を盛り込むよう求めた。これに合わせて、下請け側にも法定福利費の算出方法を周知し、社会保険加入に必要な適切な法定福利費の支払いを元請けに求めてもらう。
法定福利費として内訳明示するのは、健康保険料(介護保険料含む)、厚生年金保険料(児童手当拠出金含む)、雇用保険料の「事業主負担分」。
法定福利費は通常、年間の賃金総額に各保険の保険料率を乗じて計算するが、工事の見積もりで労働者の年間賃金を把握することができないため、見積額に計上する「労務費」を賃金とみなし、各保険の保険料率を乗じて算出する。具体的には、労務費総額に各保険の保険料率を合算した法定保険料率を乗じて法定福利費を算出。各企業、地域などでばらつきはあるが、法定保険料率は15%程度になるケースが多いという。
各保険のうち、協会けんぽの介護保険の保険料率は全国一律だが、介護保険の対象者である40〜64歳の現場労働者に限って費用を計上する必要がある。対象の現場労働者の割合を工事ごとに把握するのは難しいため、介護保険料率に事業主負担相当の保険料率(2分の1)を乗じた上で、40〜64歳の「被保険者割合」を乗じて算出する。協会けんぽの被保険者割合は52・9%(2013年度)。
個人事業所(常時使用の労働者5人未満)や一人親方などは、健康保険や厚生年金保険に加入義務のない「適用除外」となるため、内訳明示する法定福利費からも事業主負担を除外する。ただ、実務上、全ての適用除外の作業員を把握することは難しいため、見積段階では全作業員の加入を前提に法定福利費を内訳明示し、その後、元請けや直近上位の注文者と協議し、精算する手法を例示している。
作成手順は、国交省HPの政策情報・分野別一覧「土地・建設産業」にある「社会保険未加入対策」の中に掲載している。
提供:建通新聞社