国土交通省は19日に開いた「建設産業活性化会議」で、現場の労働者の技能と経験を見える化″した就労履歴管理システムを早急に構築することで、建設業団体などの関係者と合意した。国交省と建設業団体が集まるコンソーシアムを近く立ち上げ、元請け企業の労務管理システムに登録された労働者の現場経験データなどを統合する新たな枠組みを作る。国交省はさらに、民間建築現場で生産性を向上させた事例をベストプラクティス″としてまとめるために作業部会を設置する他、女性が働きやすい現場環境を整えた事例を集めた「建設業・女性活躍ケースブック」を作成するとした。
19日の建設産業活性化会議では、2015年度に国交省や建設業団体などの関係者が、技能労働者の処遇改善を中心とする担い手確保・育成に加え、新技術・新工法の活用や重層下請構造の改善といった生産性向上に官民共同で取り組む方向性を確認した。
芝浦工業大学の蟹澤宏剛教授は、就労履歴管理システムを構築する意義について「社会保険の加入状況が把握できるだけでなく、職人の熟練度を評価できるシステムの構築が不可欠だ」と関係者が協力してシステム構築を目指すよう求め、建設業団体らも基本的にこの考えに同意した。
国交省を中心に発足するコンソーシアムには、日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会、全国建設産業団体連合会の建設業5団体に加え、全国建設労働組合総連合などが参加する見通し。
就労履歴管理システムは、建設現場ごとの労務安全書類の電子化にとどまっている労務管理システムについて、登録された労働者の現場経験データを統合。各労働者に与える現場共通のIDカードで入退場管理を行い、本人確認や資格をチェックするとともに、各労働者の現場経験データを蓄積できるようにする。
技能と経験を見える化することで、労働者の適正な評価と処遇、技能・経験に応じた人材配置の効率化などが期待できるという。
一方、生産性向上では、民間建築現場での実践事例集をつくる。国交省を中心に建設業団体や学識経験者らで作業部会をつくり、民間建築工事での▽設計・施工一括方式の活用▽設計図書の不備の解消▽労務の効率化―などの事例を収集するとともに、業界内に展開するための手法も検討する。
女性の活躍に向けては、国交省などが女性や経営者に対する実態調査を行って女性の就業人数、産休・育休制度の導入率などを公表する。実態調査を踏まえ、育児中の女性を働きやすくする「フレックス朝礼」の導入など、業界内の好事例をまとめたケースブックを今夏にもまとめる。
提供:建通新聞社