国土交通省は、建設工事における技術者の配置要件を緩和する方針を固めた。今秋にも建設業法に基づく政令を改正する。物価上昇や消費増税に対応するため、1994年度に制定された現行制度を改正し、監理技術者の配置、監理技術者・主任技術者の専任が求められる工事の金額要件をそれぞれ引き上げる。政令改正で2級技術検定の全職種で受検資格も緩和し、指定学科以外の普通高校生が在学中に学科試験を受検できるようにする。
技術者制度は、昨年9月に設置された「適正な施工確保のための技術者制度検討会」で、効率的な技術者の活用と将来の担い手確保を論点に見直しを検討しており、19日の「建設産業活性化会議」で要件緩和に踏み切る方針が示された。
現行の技術者制度では、元請けに対し、下請け合計金額3000万円以上(建築一式は4500万円以上)の工事で監理技術者の配置を義務付け。元請け・下請けの双方に、公共性のある施設など重要な建設工事のうち、請負金額2500万円以上(建築一式は5000万円以上)の工事で、監理技術者・主任技術者を専任で配置することが義務付けられている。
現在の金額要件が決められた1994年度以降、物価率(建設工事デフレーター)は8%程度上昇。さらに、消費税は2段階の税率引き上げで、3%から8%に増税されている。物価上昇や消費増税などを踏まえて金額要件を引き上げ、建設企業がより効率的に技術者を配置できるようにする。
一方、2級技術検定(学科試験)の受検資格は、若年者の入職を促進するため、2016年度試験から緩和する。現在、普通高校の卒業生は、4年6カ月以上の実務経験を経ると2級技術検定の学科試験・実地試験の受験資格が与えられるが、実務経験がなくても在学中に学科試験を受検できるようにする。
在学中(高校2年時)から受検することが可能になるため、学科試験を最短で受検できる年齢が7年前倒しされることになる。併せて、これまで高校3年時に学科試験を受検できた工業高校(指定学科)の在校生も、2年時から学科試験を受験できるようになる。
実地試験の受検資格で求められる実務経験(指定学科3年、指定学科以外4年6カ月)は変更しないため、主任技術者の資格を得られる年齢は変わらない。ただ、学科試験を受検できる年齢を早めることで、若年者の早期離職を食い止める効果を狙う。
「官公需組合 技術者の在籍出向可能に」
19日の建設産業活性化会議ではまた、これまで直接雇用を条件としていた官公需適格組合の監理技術者・主任技術者について、組合員の企業からの在籍出向を認める改善案も提示された。在籍出向を希望する組合員の企業には、経営事項審査を受審していないことや、建設業許可を取得していることなど求める。
現在、建設系の官公需適格組合は約200団体あるが、組合としての受注機会が減少しているため、組合員の企業が技術者を転籍させることは難しいという。一方、組合員の企業の中には技術者数に余裕がある企業もあるため、要件緩和で組合内の効率的な技術者配置を可能にする。
提供:建通新聞社