建設経済研究所が23日に発表した建設経済レポートで、建設技能労働者の減少が地方でより深刻に進む見通しであることが明らかになった。同研究所が行った2030年の地域別の技能労働者数の将来推計では、関東の推計値が全国平均と同等、中部、近畿の推計値が全国平均を下回った一方、そのほかの全6地域で平均を上回る結果が出た。中でも、北海道、東北、四国は、30%を上回る減少が見込まれるという。
建設経済研究所が行った将来推計では、10年の国勢調査で266万4000人だった技能労働者が現在のペースで減少した場合、30年には23・7%減の203万4000人になると見込んでいる。
この推計を地域別にみると、関東が23・9%減、中部が22・4%減、近畿が21・8%減と都市部に減少幅の下位3地域が集中したのに対し、そのほかの▽北海道30・5%減▽東北32・4%減▽北陸26・5%減▽中国26・4%減▽四国31・1%減▽九州・沖縄29%減―と全国平均を大きく上回った。
レポートでは、将来推計に都市部と地方部の差が生じたことの背景に、技能労働者の年齢構成があると分析。例えば、東北では、いわゆる団塊世代などの高年齢層の労働者が多いため、この年齢層が退職すると労働者数が全体として大きく減少することが予想される。
一方、関東における技能労働者の年齢層は、団塊ジュニア世代などの中堅層の労働者が占める割合が高く、高年齢層の退職の影響は地方に比べて少ないという。
建設投資が大きい都市部の建設現場には、働き盛りの中堅層が集中する傾向にあり「将来の技能労働者不足は地方でより深刻である」とみている。
すでに、地方では担い手不足が現場に重大な事態を引き起こしている。建設経済研究所が島根県や同県内の建設業団体に行ったヒアリングでは、13年7月に県西部で発生した豪雨災害の災害復旧工事では、半数近くで入札の不調・不落が発生した。
レポートでは、地方の建設企業の安定経営と優秀な人材確保に向け、適切な賃金水準の確保、学校・保護者との連携強化、建設業のイメージアップに加え、発注者が主体的に取り組むべきだと求めた。公共工事への依存度が高い地方では特に、改正品確法で示された発注者責務を果たすことが求められると指摘。また、会員企業の減少で人員・予算が不足している建設業団体の機能を強化するため、行政が積極的に支援することも提言した。
提供:建通新聞社