農林水産省は、農地転用規制の在り方について検討を始めた。農地の流動化を促進する観点から、農業振興地域制度や都市計画制度との整合や影響などを現地調査や関係者へのヒアリングを踏まえて検討、16年度中をめどに中間とりまとめを行う。15年度は4f超の農地転用許可権限の委譲に伴う指定市町村制度の指定基準についても検討する。
検討会は、土地利用や規制制度、農地の取り引き・転用価格などの現状を把握。その上で、農地転用利益の徴収や還元方策、公益性や財産権上の妥当性、地域の農業や経済に与える影響などについて検討する。
同省によると、農地転用面積は高度経済成長期に大幅に増加。1973年のオイルショック以降の安定成長期には3万f程度で推移し、3万6000fとなった91年に第2のピークを迎えた後は減少傾向で推移している。近年は高度経済成長期に大きなウエートを占めていた工場や道路などへの転用が減少している。
適用条項別の農地転用の状況(12年度)を見てみると、賃借権の設定・所有権の移転などを伴う農地法第5条許可が約8割を占め、このうち賃貸によるものが5割、対価の支払いのない所有権移転と使用貸借権の割合が2割を占めている。
政府は2014年6月に「規制改革実施計画」を閣議決定し、この中で「農地流動化の阻害要因となる転用期待を抑制する観点から、転用利益の地域農業への還元など、公平で実効性のある方策について中長期的に検討を進める」とした方針を打ち出していた。
また、政府の地方分権改革推進本部は15年1月に第7回会合を開き、農地転用許可に係る権限移譲について全国知事会などから寄せられた提案への対応方針を閣議決定。農地の総量確保を担保しつつ、2〜4fの農地転用に係る国との協議を廃止し、4f超の農地については農地転用許可の権限を都道府県などに移譲することを決めた。さらに一定の要件を満たした農林水産大臣が指定する市町村には、都道府県と同様の権限を移譲することを決定していた。
提供:建通新聞社