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2015/03/21

建設業の再生・進化へ道筋 日建連ビジョン

 日本建設業連合会(日建連)は建設業の長期ビジョンをまとめた。2050年までの超長期スパンに立ち、人口減少社会の下で建設業が「国民産業」などとしての使命を果たしながら進化するための方向を整理。また、今後10年以内に見込まれる100万人規模の大量離職時代を「新規入職者の大量確保による世代交代」と「生産性向上」で乗り切り、2025年までにたくましい建設業の再生を目指す上での道筋を示した。その中で、25年度の建設市場を46・8兆〜62・1兆円と推計し、若者を中心に90万人(うち女性20万人以上)の新規入職者を確保して、技能労働者不足に対応する目標を掲げた。
 経済対策や東京五輪の開催決定などによるデフレ脱却局面を好機と捉え、産業体質のぜい弱化や企業体力の劣化、技能労働者の処遇低下といったバブル崩壊後の矛盾の解消につなげるための取り組みを網羅。女性を含めた若年労働者を早急に確保しなければ「建設産業の生産体制が破たんしかねない」(中村満義会長)との危機感の下、約1年を掛けて検討を進めた。
 会員企業だけでなく、日本の建設業全般を対象とし、地方・中小建設業や専門工事業、行政機関などと課題を共有。さまざまな取り組みが連携して展開されることにも期待を示した。
 具体的に見ると、2050年に向けた進化の前提として、建設業を「国民産業」と定義。国民に不可欠な生活・産業基盤を提供する使命があること、国民の安心・安全を担わざるを得ないことなどを理由として挙げた。併せて、災害列島に住む国民を国土強靭化の施設整備で守り、災害発生時の被災者支援から応急復旧・本格復旧、復興など一連の災害対応(応災)に責任を持って取り組むことが使命とした。
 これらの役割を担うため、建設企業には適正利潤の確保(安値競争の排除)や節度ある市場行動(むやみな拡大路線の回避)などが求められると主張。受注産業であっても▽社会資本のストック効果をより発揮できる提案▽再開発などの初期構想段階からの参画▽ゼロ・エネルギー・ビルなどの商品開発―など、自ら需要を創出する取り組みの重要性を唱えた。海外展開については、相手国固有のリスクを回避することが必要だとして、海外建設業協会による事業環境の整備に期待を寄せた。
 一方、2025年を目指して建設業が再生するため、他産業に負けない賃金水準や社会保険加入などとともに「休日の拡大」「雇用の安定」の必要性を提唱。建設業の休日の少なさが「明らかに異常」で、休日を犠牲にして「国民にサービスし過ぎている」と断じ、若年労働者を確保するためにも「週休2日」などを一斉に進めるべきとした。
 雇用面では、企業が技能労働者を直接に常時雇用(社員化)することが「切り札」とし、専門工事業の努力だけでなく、社員化に取り組む下請けへの発注の平準化や、常勤の優れた職長への手当支給といった元請けの支援の拡大も求めた。元請けによる「直用班」の復活にも言及した。
 人材に関しては、2025年の女性技術者・技能者数を約30万人と、現在の約9万人から3倍以上にする新目標を設定。外国人技能実習生は就労期間が限定されているため、世代交代を担う基幹的な技能労働者にはならないとの認識を示した上で、国内人材の確保に本腰を入れなければ「建設業の再生は望めない」と訴えた。
 再生への方策の柱には▽建設生産システムの合理化(新技術・省人化技術の活用、下請け次数の削減など)▽健全な市場競争の徹底(コンプライアンス、ダンピング防止)▽信頼の確保▽魅力の発信▽積極的な広報展開―の五つを据えた。

【生産性向上も77万〜99万人が不足】 

 25年度の市場規模は、国土交通省が発表する建設投資に民間建築分野の維持修繕分を加えたもの。内閣府の試算をベースに建設経済研究所と共同で、原発関連の除染や廃炉による事業費などを折り込まない「慎重型」の予想とした。
 一方、この市場規模に必要な技能労働者数は、会員企業が過去10年間の建設需要減少下で取り組んだコストダウンの実績を踏まえ、生産性の向上で10%以上、人数にして35万人分の省人化が実現すれば、293万〜315万人で対応できるとした。
 ただ、2014年時点で60歳以上の技能者が今後全て離職するなどの前提に立つと、2025年には技能労働者が約128万人減の216万人まで落ち込むと推計。77万〜99万人の不足が生じることから、入職時で34歳以下の若者を中心に90万人の新規入職者を確保する目標を設定した。

提供:建通新聞社