トップページお知らせ >中央ニュース

お知らせ

中央ニュース

2015/03/18

【国連防災世界会議】防災から減災への転換を提言

 国連防災世界会議パブリック・フォーラムの一環として東北地方整備局は16日、仙台市内で「東日本大震災の経験と教訓を世界へ」と題したシンポジウムを開催した。行政や建設業界などから約350人が集まる中、縄田正東北整備局長は教訓を後世に伝承することが重要と強調。基調講演で畑村洋太郎東京大学名誉教授は「絶対安全はあり得ない」とし、災害が起こらないようにする「防災」から、事故や災害が行った後のことを考えて被害を最少にするための対策を準備する「減災」への転換が重要と提言した。
 畑村氏はさらに、「一人ひとりがどのような危険があるかを考え、その地域にどのような危険があるかを地域の全員が共有している状態をつくり続ける必要がある」と強調。震災の記憶を長く伝承するため、小説や歌、ことわざ、芝居のように文化として残す仕組みや、学校行事に津波教育を組み込む防災教育、震災遺構などが必要との考えを示した。
 パネルディスカッションでは畑村氏がコーディネーターとなり、震災の教訓について議論した。
 東日本大震災の時、東北整備局で防災課長として初動対応に当たった復建技術コンサルタントの熊谷順子氏は、「今後行政はスリム化する。官民が危機意識を共有することが大事だ」と指摘。併せて「今回の震災にとらわれず、個人の想定力を磨くことが防災力の向上につながる」と提言した。
 岩手県釜石市の野田武則市長は「釜石湾口防波堤は決壊したものの市中心部を守った。あれがなければもっと被害が拡大した」と述べる一方、市内の小中学生が自主的に避難し全員が助かった「釜石の奇跡」を紹介し、ハード・ソフト両面での対策が重要と訴えた。
 道路啓開に当たった刈屋建設(岩手県宮古市)の上野裕矢次長は「復興が落ち着くと仕事量が激減するだろう。今回は保有する作業員、機械で対応できたが、今後は難しくなる。地域の防災力を高めるため、地域業者が存続する施策を国、県に打ち出してもらいたい」とアピールした。
 震災時、宮城県土木部に出向していた東北整備局の渥美雅裕副局長は、「仮設住宅の建設場所は被災後に考えたため、学校の校庭など将来のまちづくりの支障になるところまで用地になった。仮設住宅の設置場所は今からできる準備だ」と話した。

提供:建通新聞社