国土交通省などは15日、国連防災世界会議の総合フォーラムとして「激甚化する巨大災害にどう立ち向かうか」をテーマにしたシンポジウムを仙台市の東北大学川内萩ホールで開いた。大きな災害に見舞われた各国から専門家が集まり、今後の防災対策を議論。市民に災害リスクを理解させながら、ハード・ソフトを組み合わせた対策を施し、災害の教訓を生かしたより良い復旧・復興を進めることが必要との認識で一致した。
このシンポジウムは、国交省、土木学会、水と災害ハイレベルパネルが共催し、約1000人が参加した。北川イッセイ副国交相は開会に当たり「東日本大震災からの復旧・復興を国の最重要課題として推進している。災害から学び次に生かすことが重要であり、きょうの議論の成果が世界の防災・減災対策に寄与し、一人でも多くの人命を守ることができるよう願っている」とあいさつした。
基調講演では、国連防災と水に関する事務総長特使であるハン・スンス氏が「防災の主流化」、関西大学の河田惠昭教授が「国難、巨大災害を迎え撃つ」と題し、それぞれの考えを語った。
ハン氏は「防災に使われる1ドルで、事後復旧に要する4ドル〜7ドルを節減できる」と事前防災の必要性を指摘した上で、「政策の隅々に防災の思想を組み込む『防災の主流化』を進めていかなければならない」と訴えた。
河田教授は「南海トラフ巨大地震や首都直下地震が起これば、日本は先進国から転落するほどのダメージを受ける。東京オリンピックの最中に巨大地震が起こるかもしれない」との危機感を示し、「各国が情報を共有しながら、災害に強靱な国家となる必要がある。対策先行型の社会に脱皮することが課せられている」と強調した。
パネルディスカッションには、国交省の徳山日出男技監、フィリピンのロヘリオ・シンソン公共事業道路大臣、トルコのフアット・オクタイ首相府災害緊急事態対策長官、オランダのクース・ウィリクスインフラ環境省戦略アドバイザー、アメリカのジェームズ・ダルトン陸軍工兵隊技術監がパネリストとして参加。土木学会の磯部雅彦会長がコーディネーターを務めた。
この中で徳山技監は「4年前の東日本大震災を東北整備局長の立場で経験した。その教訓を踏まえ、巨大災害にはハードだけでなくソフトを含めた総力戦で防備する必要性を認識した。巨大災害の全てを防ぐことはできないが、あきらめてはならない。知恵と工夫を重ねて巨大災害に対応できるよう備え抜くことが不可欠だ」と述べた。
提供:建通新聞社