国連に加盟する約190カ国の首脳・閣僚らが今後の国際防災戦略を議論する国連防災世界会議が、14日から仙台市の仙台国際センターで開かれている。同日の開会式で安倍晋三首相は「東日本大震災や各国で発生した災害の教訓を時代を超えて共有することが重要だ」と指摘。会期は5日間で、最終日の18日に今後の行動枠組みなどを採択する。会期中には、一般の人々が参加可能なパブリックフォーラムも各地で数多く開かれ、併せて4万人以上が防災に関するさまざまな催しに参加する見通しだ。
国連防災世界会議は、国際連合の総会で決議された国際会議。一般には非公開の本体会議では、国連加盟国、国際機関、NGOなどが参加し、今後の国際的な防災戦略を話し合う。14日の開会式には、日本から天皇皇后両陛下が臨席されたほか、安倍首相、山谷えり子防災担当相らが顔をそろえた。海外から潘基文国連事務総長のほか、各国の首脳・閣僚が出席した。
国連の潘基文事務総長は日本が国連や防災に果たしてきた役割に感謝の念を示した上で、「世界では災害により年間300億ドルの損失が出ているが、防災対策に年間60億ドルを投資すればそれを大幅に抑えることができる。防災は気候変動リスクを軽減するための最前線の対策であり、賢明な投資が不可欠だ」と強調した。
会議の議長を務める山谷防災担当相は「前回の会議で策定した兵庫枠組から10年が経つが、その間に気候変動など新たなリスクが顕在化している。仙台会議では新たな枠組みの策定を予定しており、防災の転換点となる重要な機会だ」と指摘した。
開催地である仙台市の奥山恵美子市長は、「仙台の強みである市民やコミュニティの力を生かした防災への取り組みは、世界のあらゆる国に大いに参考になるはず。尊い犠牲を払って震災から学んだ経験と教訓が世界の防災戦略の策定に生かされることを願っている」と訴えた。
本体会議では、各国の意見表明や閣僚級のラウンドテーブル(円卓会議)を経て、最終日の18日に、2015年までの「兵庫行動枠組」後を引き継ぐ行動指針や政治宣言、コミットメントを採択する。新たな行動指針では死者数や被災者数、経済損失などの減災指標を初めて明確化する見込みだ。
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パブリック・フォーラム
各地で開催
会期中には、一般の人々も参加できるパブリック・フォーラムが被災地各所で実施されている。14日には内閣府の「我が国防災の展望:究極の防災対策を目指して」、15日には国交省の「東日本大震災を教訓とした大規模自然災害への対策の在り方」、16日には内閣官房の「国土強靭化―私たちは次の世代に何を残すべきか」や、宮城県建設業協会の「未来に向けて―建設業が果たす役割・街づくりと中学生記者が考える防災」などが開かれ、数多くの参加者が集まった。期間中のシンポジウム・セミナーは計350回以上の開催が予定されており、東日本大震災の教訓などを国内外に発信する。
提供:建通新聞社