農林水産省と建設トップランナー倶楽部(代表幹事・米田雅子慶應義塾大学特任教授)の共催による「建設業と農林水産業の連携シンポジウム」が6日、東京都千代田区の農林水産省講堂で開かれた。サブタイトルを「建設帰農・林建協働の十年の歩み」と題したこのシンポジウムでは、農林水産業に進出した建設業の歩みを振り返るとともに、これからの課題を浮き彫りにし、地域における建設業と農林水産業の連携による地方創生の可能性について議論した。これには農林水産省と国土交通省の幹部ら約350人が集い、建設業から農林水産業の各分野に進出した同倶楽部の代表20者の事例発表に耳を傾けた。
主催者を代表して、同シンポジウムの発案者でもある農林水産省の皆川芳嗣事務次官=写真=は「建設業と農林水産業が連携してこそ、内発的な自立発展の可能性が生まれてくる」とシンポジウム開催を意義付けた後、「厳しい現実は前向きにとらえ、それぞれの地域で新しい連携を構築し施策に反映してきいたい。地方創生に向け、変化を感じ力強く歩んでいこう」と述べた。共催者である同倶楽部の米田代表幹事は、「建設業を中核にしながら農林水産業に進出してきた地域のトップランナーの姿を通じて、さらなる建設業と農林水産業の連携による地方創生の可能性を議論していきたい」と開催趣旨を説明した。
シンポジウムは「建設業の農業参入」「複業による地域創生」「林建協働」「森林再生・地域創生・森林資源活用」の4部構成とし、各部5者の計20者が事例を発表。農林水産・経済産業・国土交通の各省から各部2人がアドバイザーとしてそれぞれの事例について講評を述べた。
このうち「建設業の農業参入」では、愛亀(愛媛県)の西山周社長が「あぐりから地域総合産業へ」と題し、建設会社の強みを生かした農業の展開について発表。「グループ企業の農商工連携によるサッカー型≠フ経営で、多様な地域インフラの整備に貢献していく」と述べた。未来彩園(宮城県)の深松努社長は「オランダ型トマト菜園と木質バイオ利用」と題し、「木質チップバイオマスボイラーの導入は燃料費高騰によるコスト抑制策」と説明。「県内トップクラスの農場にすることができた。被災地の復興農場から研修者を受け入れるなどコンサルティングも行っている」と強調した。
また「複業による地域創生」では、佐久間建設工業(福島県)の佐久間源一郎社長が「森林・農業・地域再生」と題して「地域の森林資源を活用し、農業との連携を模索してきた」と振り返った後、「『地域とともに生きる』をテーマに地域経済の再生に貢献していきたい」と語った。飯古建設(島根県)の田仲寿夫社長は、隠岐牛の飼育と定置網漁で島おこしに挑んできた実績を披露。「島の産物を東京市場に安定的に供給していくとともに、海外市場への進出も考えていきたい」と述べた。
「林建協働」ではたかやま林建の長瀬雅彦氏(長瀬土建社長)、下呂林建共同企業体の森本繁司氏(馬瀬建設社長)らが岐阜県内における林建協働の取り組みを紹介した。
「森林再生・地域創生・森林資源活用」では、管野組(北海道)の管野浩太郎取締役が、オホーツク振興に向け農業へ参入してきた経過を話した後、「自然の掟に逆らわず、強い苗木を次の世代へと受け継いでいくことが責務だ」と決意を語った。
提供:建通新聞社