改正公共工事品質確保促進法に基づく「発注関係事務の運用に関する指針」(運用指針)が大筋で固まった。公共工事の発注者が、改正法に位置付けられた発注者責務を果たした発注関係事務を効率的に運用できるよう、発注者共通の指針となるもので、最新の積算基準の適用などによる予定価格の適正な設定、歩切りの禁止、予定価格の原則事後公表、適切な設計変更などについて、発注者が「必ず実施すべき事項」と位置付けている。国土交通省は、各発注者が指針を浸透させるため、実務の参考となる「解説資料」も作成する。加えて、説明会の開催、相談窓口の開設などによる周知も図り、4月1日から指針に基づく発注事務の運用を開始する。
21日に開かれた自民党の「公共工事品質確保に関する議員連盟」の公共工事契約適正化委員会に、運用指針案として報告された。1月中にも「公共工事の品質確保の促進に関する関係省庁連絡会議」を開き、省庁間の意思統一を図った上で最終決定する。
21日の会合で示された指針案で、各発注者が「必ず実施すべき」とされた項目のうち、予定価格の適正な設定については、受注者が担い手の育成・確保のための適正利潤を確保できるよう、市場における労務・資材の取引価格や施工実態を的確に反映した積算、適正工期を前提とする最新の積算基準の適用などを要請。歩切りの禁止についてもあらためて促す。
ダンピング受注の防止に向け、低入札価格調査制度と最低制限価格制度の適切な活用を徹底させるよう求める。低入制度については、落札率と工事成績との関係についての調査実績を踏まえ、必要に応じて基準を見直すことも求める。予定価格は、技術力・経営力による競争を損ねる可能性があるなどと指摘、事後公表を原則とする。
一方、指針案には「実施に努める事項」として、各発注者に実施を委ねる事項も記載する。発注・施工時期の平準化を実現するために、債務負担行為の活用、年度当初からの予算執行の徹底、余裕期間の設定といった契約上の工夫に加え、工事の性格、地域の実情、週休2日の確保などによる不稼働日数も踏まえ、適正な工期設定も促す。
各発注者には公共工事の品質を確保するための体制強化にも取り組んでもらう。職員を国・都道府県が開催する講習会や研修を受講させるといった、発注者自らの研さんを推奨。一方、国・都道府県が公共工事の発注者支援機関の認定制度などを構築し、市町村の体制を補うことも求める。地域の発注者協議会などを通じ、発注者間の連携も深めるよう促す。
国交省は、指針の内容が各発注者の実務を通じて浸透するよう、指針に位置付けられた取り組みの具体的事例や既存の要領などを盛り込んだ「解説資料」も作成する。指針の策定後には、説明会の開催や相談窓口も開設する。指針に基づく発注関係事務が適切に実施されているか定期的にフォローアップし、調査結果は公表する。
提供:建通新聞社