国土交通省、元請け・専門工事業団体などによる「社会保険未加入対策推進協議会」が19日に開かれ、建設業の社会保険加入の促進に向け、関係者が法定福利費の確保に向けた取り組みを強化することについて申し合わせを行った。協議会で国交省は法定福利費の支払いを実質的に担保するため、法定福利費の別枠支給などに必要な法令改正や請負契約における措置について検討する方針も示した。同省の毛利信二土地・建設産業局長は、この3年間で加入率が10ポイント超上昇するなど「着実な成果を挙げている」と話す一方、「2017年度までに加入率を製造業並み(90%)に引き上げるには、関係者の一層の取り組みが求められる」と続け、参加した民間発注者を含めて理解と協力を訴えた。
申し合わせは、建設業許可業者の加入率100%、労働者単位で製造業並みの加入率を目指すとした17年度まで2年余りとなったこの段階で、社会保険の加入に必要な法定福利費の確保に向けた取り組みを強化することを関係者間で合意するために行われた。
具体的には、国交省が4月に改訂する「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」で、元請けから下請け、下請けが再下請けに見積書の提出を依頼する際の見積条件に、法定福利費を内訳明示した見積書の提出を盛り込むことを求める。
改訂するガイドラインの内容を関係者間で申し合わせることで、下請けが法定福利費を内訳明示した見積書を提出しやすい環境を整える。その上で、下請けにも、元請けや直近上位の下請けに対し、法定福利費を内訳明示した見積書を確実に提出してもらう。
さらに、保険加入義務を免れる目的で「一人親方化」や「小規模事業主化」が進むことを抑止するため、下請けには雇用者と請負関係にある者を明確に区分し、適切な保険に加入させるよう促す。
一方、国交省は19日の協議会で、法定福利費の確保に向けた新たな対策の方向性も示した。実質的に法定福利費を担保できるよう、代金支払いにおける実務・商慣習を調査し、法定福利費の別枠支給、別枠明示、事後精算などを行う場合に必要な、法令改正・請負契約における措置などの課題を整理する。
法定福利費を算出するための解説集や建設業会計・経理実務における法定福利費の取り扱いを整理し、建設業団体に加入していない企業や小規模な企業が法定福利費を内訳明示した見積書を作成しやすい環境も整備する。
今回の協議会では、これまで日本経済団体連合会、日本商工会議所、電気事業連合会の3団体だった民間発注機関の参加団体(オブザーバー)に、不動産協会、日本ガス協会、日本民営鉄道協会、日本自動車工業会、日本電気工業会など12団体を追加。国交省は、これら民間発注者にも法定福利費確保についての情報共有と理解を求める。
提供:建通新聞社