国土交通省は17日、社会資本整備審議会建築分科会アスベスト対策部会(部会長、久保哲夫・東京大学名誉教授)を開き、「建築物石綿含有建材調査者」の活用をさらに推進し、「同調査者による調査環境が全国的に整った段階で地方公共団体への国庫補助での要件化を行う」とした方針をあらためて示した。複数の委員からは建設業法が改正され、解体工事が建設業法で規定される29番目の業種となったことなどを踏まえ、建築物などの解体工事の過程(事前調査)における同調査者の積極的な活用を求める意見などが出された。
国交省は、同アスベスト対策部会ワーキンググループ(WG)からの提言を受けて2013年7月30日付で「建築物石綿含有建材調査者登録規定」を公布、施行しているが、部会には14年9月末時点での有資格者が186人となっていることを報告。
一方で、登録規定に基づく講習を14年1月から開始して以降、有資格者がいる都道府県が33団体、うち5人以上の有資格者がいる都道府県は9団体にとどまっていることを説明し、国庫補助で要件化する時期については「それぞれの都道府県に少なくとも複数の有資格者がいる必要がある(その環境が整った時点)」との認識を示した。
今後の同調査者の活用の推進についてはWGで行った整理内容を説明。建物の取り引き時▽建物の使用(維持管理)時▽建物の解体時―の各段階での活用が望まれるとした上で、調査者の活用が期待される業務領域やツールとして、建物取り引き時における不動産鑑定評価、デューディリジェンス(不動産の詳細評価)、重要事項説明、住宅性能表示を例示。建物使用(維持管理)における活用としては資産除去債務、定期調査報告制度、公共建築改修工事標準仕様書などを挙げた。
2028年ごろにピークを迎えると予測されている建物の解体については、委員からも労働安全衛生法を所掌する厚生労働省や、大気汚染防止法を所掌する環境省との連携を強化し、建築物解体時の事前調査での同調査者の活用を推進する必要があるとの意見や、国交省が環境省と共管する建設リサイクル法での同調査者の活用を促す意見などが出された。
国交省は今回の部会を受けて、引き続きWGでの調査・検討を継続。同調査者の活用状況をフォローアップしつつ、省内や関係省庁の理解と協力を得ながら、これらが所掌する諸制度における同調査者の活用の促進を図っていく方針だ。
提供:建通新聞社