失業者の就職や民間企業在職者の処遇改善を支援する「地域人づくり事業」の建設分野での活用が各都道府県に浸透してきた。国土交通省が建設分野における活用状況を調査(11月末時点)したところ、40都道府県が建設分野91事業を行うと回答したという。ただ、同事業による賃金助成や就職説明会を実施し、期間雇用につなげた都道府県がある一方、現時点で当初の計画通りに雇用が進んでいないところもある。国交省は成功事例を各都道府県に展開することで、建設業への人材の定着につなげたい考え。
厚生労働省は、ことし2月に成立した2013年度補正予算に地域人づくり事業の経費1020億円を計上。都道府県が造成する基金に同省が交付金として予算を積み増し、都道府県が失業者の就職、企業の処遇改善に取り組む企業・団体などに事業を委託する。
国交省の調べによると、建設分野では40都道府県が91事業の実施を決めており、予算総額は42億円に上る見通し。このうち、失業者の就職を支援する「雇用拡大プロセス」は、36都道府県が64事業の実施を予定している。賃金助成などによる雇い入れを含む事業はこのうち55事業で、建設業団体、企業などが共同体をつくるなどして、期間雇用した若年者の賃金を助成したり、共同で教育訓練を行う。
企業の在職者に対する処遇改善を支援する「処遇改善プロセス」は23都道府県が28事業を実施する。建設業団体などが社会保険加入の促進に向けた相談窓口を開設したり、若手技能者の資格取得・技能訓練を支援する取り組みが主流だ。社会保険労務士に事業を委託し、雇用管理に関する相談会を開催するところもある。
同事業が実際に建設業の雇用につながる事例も出始めている。岐阜県では、岐阜県建設業協会などでつくる共同体に事業を委託し、雇用拡大プロセスで31人(11月1日時点)の新規雇用を実現。富士教育訓練センター(静岡県)で新規入職者向けの研修も開いた。
国交省は、同事業による期間雇用が正規雇用につながったかどうかを含めて事業の進捗(しんちょく)をフォローアップし、その中で得られた成功事例を各都道府県に展開する。15年度末の事業完了を見据え、事業を実施していない都道府県に積極的な活用も呼び掛ける。
提供:建通新聞社