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2014/10/10

泉南石綿訴訟、最高裁「国の不作為」認定 

 最高裁判所第1小法廷(白木勇裁判長)は9日、「泉南アスベスト訴訟」の上告審に対する司法判断を示した。国の規制権限不行使(不作為)について、国が1958年時点で局所排気装置の設置を義務付けなかったことは、国家賠償法1条1項に違反すると認定、国の責任を認めた。ただ71年以降国が行った規制の違法性は認めなかった。それでも、この裁判で最高裁が示した国の不作為責任の有無に対する統一判断は重く、横浜アスベスト訴訟をはじめ、現在、全国6箇所の裁判所で係属中の建設アスベスト集団訴訟の行方や、今後の国のアスベスト対策の在り方に、大きな影響を与えることは必至だ。
 泉南アスベスト訴訟は、大阪府南部の泉南地域のアスベスト(石綿)使用製品の製造工場などに勤務していた元従業員や近隣住民とその家族が、石綿による健康被害は国の規制権限の不行使(不作為)が原因だとして、国に損害賠償を求めていた集団訴訟。
 裁判では、▽粉じん飛散を防ぐ排気装置の設置義務付け▽粉じん濃度の規制強化▽従業員への防じんマスク着用義務付け―など、健康被害防止のために国が行った規制内容とその実施時期などの妥当性が争われた。これら三つの争点については、第1陣、第2陣の二つの集団訴訟で控訴審(大阪高裁)での司法判断が分かれていた。
 第1陣訴訟(原告34人・被害者26人)は10年5月、大阪地裁が国の規制権限不行使の違法を認め、国に約4億3500万円の賠償を命じる判決を言い渡したが、大阪高裁(控訴審)は11年8月、1審の大阪地裁判決を取り消して原告の請求を全て棄却。原告が上告および上告受理申立てを行っていた。
 第2陣訴訟(原告55人・被害者33人)は12年3月、粉じん飛散を防ぐ排気装置の設置義務付けについて国の責任を認定し、約1億8千万円の賠償を命令。大阪高裁(控訴審)は13年12月、国の規制の遅れと健康被害との因果関係を認め、約3億4千万円の損害賠償を命じていたが、これを不服とする国が上告していた。

提供:建通新聞社