全国建設業協会(全建)傘下の都道府県協会会員企業で、従業員の賃金や下請け契約時の労務単価が上昇傾向にあることが分かった。「将来の地域建設産業の担い手確保育成のための行動指針」の年内策定に向けて実施したアンケート調査の結果によると、回答を寄せた会員企業の約9割が従業員の賃金の引き上げ、約8割が下請け契約時の労務単価の引き上げに動いていた。また、社会保険加入は現場労働者ベースでも約8割、標準見積書を活用・尊重する割合は約9割に到達。週休2日制の定着には「適正な工期」が必要との意見が最も多かった。
今回のアンケート調査は、全建が都道府県協会に各団体会員企業30社を対象として実施するよう依頼。ことし8月1日現在の状況として、44団体の1064社(土木380社、建築76社、土木建築596社、その他12社)から回答が集まった。
質問の柱は▽賃金水準の確保▽社会保険加入▽標準見積書▽週休2日制▽重層下請け―の五つ。このうち社会保険加入では、下請けを含む現場労働者約4万5000人分(3保険平均)のデータを集計できた。
会員企業従業員の賃金に関する回答は「最近、基本給を引き上げた」が69・5%で最も多く、「一時金のみ引き上げた」の10・8%と「引き上げを予定」の6・1%を合わせ、約9割が引き上げに動いていた。また、下請け契約時の労務単価は「最近、引き上げた」の59・1%と「引き上げを予定」の19・8%で全体の約8割を占めており、設計労務単価のアップなどによる効果が現れた格好となった。
社会保険(健康、年金、雇用)については、会員企業が3保険全てで100%加入。1次下請けが92・5〜93・4%、現場労働者ベースで75・8〜82・8%となっている。
標準見積書は、提出を指導していると答えた約7割が▽既に活用(41%)▽提出されれば尊重(49%)▽十分な見積書が提出されない(7%)▽見積書が提出されない(3%)―と説明。残りの約3割は提出を指導していないものの、99%が「提出されれば尊重」する考えを示した。
週休2日制の状況は「一部実施」の48%を筆頭に、「実施していない」の30%、「変形労働時間制で実施」の15%、「実施している」の6%が続く。定着するための条件として「適正な工期」(402件)、「労務単価・諸経費のアップ」(138件)、「受注量の平準化」(134件)などの意見があった。
重層下請けに対する回答は▽下請なし=4%▽1次まで=23%▽2次まで=40%▽3次まで=26%▽4次まで=7%―の内訳で、3次までが9割を占めた。行き過ぎた重層下請構造を解消するには「適切な下請けへの発注」(99件)や「受注量の平準化」(90件)、「人員確保」(86件)などが必要とした。
全建はアンケート調査の結果について「会員企業の取り組みが着実に進んでいることが明らかになった」(事務局)と分析している。
提供:建通新聞社