国土交通省は、東日本大震災の被災地の公共建築工事における入札不調の発生を未然に防ぐため、被災3県の地方自治体に実勢価格や現場実態を反映した「営繕積算方式」を普及させる。直轄の営繕工事で実施している見積活用方式や現場実態に合った共通仮設費の積み上げる営繕積算方式」と、見積活用方式の適用を入札説明書に明記したり、設計図書に施工条件を明示する「積算の見える化」を図るためのマニュアルを被災3県の自治体に周知する。10月以降、自治体向けの説明会も開く。
営繕積算方式は、適切な工期設定、市場価格との乖離(かいり)が認められる工種での見積活用方式の導入、現場実態に合った共通仮設費の積み上げ、物価上昇への対応などを柱に、直轄の営繕工事で試行しているもの。
国交省が鉄筋コンクリート造4階建て延べ3000平方bの庁舎の新築工事を想定し、官庁積算方式を採用して実勢価格や現場実態に合った積算を行うと、予定価格は標準積算と比べ11%上乗せされたという。さらに、工期延長やインフレスライドなどの対応を講じると14・6%上昇する。
入札参加者に対する「積算の見える化」も図る。見積活用方式を適用している工事については、入札説明書に同方式の適用工事であることを明記。共通仮設の積上げ項目(揚重機スポット、仮囲い、交通誘導警備員など)については、設計図書に施工条件を明示し、設計変更にも的確に対応できるようにする。
さらに、被災地では共通仮設費と現場管理費の実態調査を10月以降に実施し、現在の経費率と実態に乖離があれば、補正を導入することも検討する。
国交省では、近く営繕積算方式と積算の見える化に関するマニュアルをまとめ、10月から被災3県の自治体向けに説明会を開く。地方整備局に設置している公共建築相談窓口などでも、入札不調が発生した個別案件などに対応する。
提供:建通新聞社