国土交通省は1日、社会資本整備審議会の下水道小委員会を開き、新たな下水道政策の構築に向けた検討に着手した。改築更新費が増加する中、下水道管理者である地方自治体に、従来の下水道の普及と整備を目的とした事業管理に代わり、アセットマネジメントの理念を取り入れた「事業管理計画(仮称)」の提出や脆弱(ぜいじゃく)な実施体制を補完するための自治体連携の強化を求める。また、下水道事業団による代行制度の活用など体制補完の仕組みも検討する。11月に小委員会がまとめる答申を踏まえた下水道法の改正も視野に入れる。
下水道はここ30年間で集中的に整備が進み、管路延長約45万`、処理場約2200カ所の膨大なストックが確保されたため、改築更新費は2013年度の年間6000億円から20年後には約1兆円まで増加することが見込まれている。一方、地方自治体の下水道担当職員は1997年度をピークに減少し、職員5人未満の自治体が約500団体に上るなど、管理体制の脆弱化も同時に進行している。
1日の小委員会では、下水道事業が抱えるこうした課題を解消するための方向性を提示。下水道を普及させるための「整備」を目的とする従来の事業計画制度を見直し、管理体制、施設管理、経営管理などの要素を取り入れた事業管理計画制度へと再構築する方針を示した。
事業管理計画には、汚水処理、浸水対策、地震対策などに関する5年程度の短期計画と10年程度の中期計画を盛り込むことに加え、改築・維持管理について予防保全管理の実施方策や点検・調査を踏まえた修繕・改築の実施方針を盛り込む。国交省が作成する「下水道全国データベース」を活用し、計画を策定する各自治体が施設管理・経営管理の現状を自己診断できるようにする。
自治体の事業の実施体制を補完する制度の確立も目指す。改正地方自治法に盛り込まれた「連携協約」などを活用した自治体連携の強化に加え、下水道事業団による代行、コンセッション方式を含めた包括的民間委託も進める。
このほか、下水道普及率の改善にスピード感を持たせる支援策も検討する。現在、ポンプ場や処理場などの基幹施設に限って事業を行っている日本下水道事業団の権限を広げ、管渠の面整備を代行できる方向で検討する。
提供:建通新聞社