積算上の単価・歩掛が維持修繕の収益性の低さに影響―。政府が1日に閣議了解した国土交通白書では、維持修繕の収益性が低い理由として、建設業・建設コンサルタントの約9割が単価・歩掛と実態との乖離(かいり)を指摘するアンケート結果を掲載。白書では、積算単価を実態に合わせて見直すことで、建設業に一定の収益性を確保してもらい、将来に向けた設備投資・人材育成のための環境を整備する必要があると提言している。
今回の白書は、笹子トンネル事故を契機として、インフラの老朽化問題に対する不安感が国民の間に広がっている現状を踏まえ「これからの社会インフラの維持管理・更新」をテーマに作成。この中で、収益性の低さなど、社会資本の維持修繕工事における問題点も取り上げた。
国土交通省が建設業・建設コンサルタントに行ったアンケート調査では、社会資本の維持管理・修繕について「作業できる時間帯や条件などの制約が多い」「設計図面や管理の履歴など、構造物の基礎的情報の不足」に加え、就業者数の減少の影響などから「作業に当たる人員の確保が難しい」との課題を指摘する声が目立った。
人員が確保できない理由の一つに収益性の低さ
があるとみられる。アンケートでは、国発注で45・5%、都道府県発注で46・7%、市町村発注で62・9%の回答者が維持修繕工事の「収益性が低い」と回答。収益性の低い理由として「実際にかかる手間・コストに比べ、積算上の単価・歩掛が低く見積もられる」と答える事業者が90%近くを占めた。
ただ、国交省が別に行った自治体向けアンケートでは「予定価格と維持修繕の実態が乖離(かいり)しているという認識はない」との回答が74%に上っており、自治体と受注者間の意識にギャップが生じている現状も浮き彫りになっている。
一方、建設業者・建設コンサルタントに、維持修繕の現場で確保が難しい人材を尋ねると、建設業者では「一般の技能者」と「職長クラスの技能者」、建設コンサルタントでは「一般の技術者」(資格を保有せず上位技術者の指示を受ける作業要員)との回答が多く、現場作業を担う人材確保が困難になっているようだ。
また、建設業者が従業員に取得してほしい資格として、1・2級土木施工管理技士に次いで「コンクリート診断士」が多くなるなど、社会資本の老朽化対策への活用が見込まれる資格に人気が集まる傾向も見られた。
提供:建通新聞社