金融機関の地元建設企業に対する貸出金額が減少している。建設経済研究所がまとめた建設経済レポートによると、公共事業をはじめとする建設投資が増加する中で、国内銀行と信用金庫の建設業に対する貸出総額は、東日本大震災が発生した2011年3月から13年9月までの2年半で8・8%減少した。全産業の貸出総額は同じ期間で4・8%増加している。同レポートでは「建設業の手元資金が増えていることなどが一因と考えられる」としている。
13年9月末まで半期ごとの建設業に対する貸出金額(または貸出比率)を継続的に公表している金融機関(国内銀行105行、信用金庫247庫)を対象に、同研究所が貸出金額を集計した。全国に支店がある大手銀行は、貸出先を業種別に分けることが難しいため、調査対象から除外しており、地域の金融機関との取引が多い地元建設企業の貸出金額の推移を示している。
この集計結果をみると、11年3月の金融機関の貸出総額は266兆1826億円で、このうち建設業に対する貸出金額は13兆8891億円、貸出比率は5・2%となっていた。一方、13年9月時点での貸出金額は279兆0307億円に増加しているが、建設業に対する貸出総額は12兆6699億円、貸出比率は4・5%といずれも減少している。
建設投資が11年度の約41兆9000億円を底に上昇傾向に転じているにも関わらず、資金需要は高まっていない。地域別でみても、震災の復旧・復興工事で工事量が大幅に増加した東北でも、建設業に対する貸出金額は減少傾向を示している。
建設経済レポートでは、こうした動向について、公共工事前払金制度を要因の一つに挙げる。震災後、前払率が40%から50%に引き上げられたことなどもあり、金融機関からの借り入れを利用しなくても、資金繰りが回転している建設企業が増えているとみている。
また、現金預金手持月数が上昇傾向にあるため、手元資金で資金繰りが賄えていることも一因になっていると推測している。
提供:建通新聞社