日本建設業連合会(日建連)は18日、「建設技能労働者の人材確保・育成に関する提言」の改定版をまとめた。前身の日本建設業団体連合会による提言(2009年4月)をベースに、技能労働者の処遇改善に向けた新たな動きを踏まえて取り組みの方向を整理し直したもの。そこでは、新たな柱の一つに「社会保険未加入対策」を掲げ、会員会社は14年度中に全工事で1次下請会社を社会保険加入業者に限定することとした。また、「賃金」や「重層下請構造」の改善を推し進めるため、技能労働者全体の平均年収を全産業レベルの約530万円(12年統計)に引き上げたり、18年7月までに可能な分野で下請会社数を2次以内に減らすとしている。
新たな柱の社会保険未加入対策で、14年度中に会員の全工事で1次下請けを加入業者に限定することにしたのは、国土交通省が8月から直轄工事で未加入の元請けと1次下請けを排除するのが理由。ただ、日建連会員は直轄工事だけでなく、自治体の工事や民間の工事など全てを対象とし、未加入対策を先導する姿勢を前面に打ち出した。
また、国交省が17年度に予定する未加入者の工事現場からの排除に向けては、元請けが直接雇用関係にない技能労働者の加入実態を正確に把握できる「就労管理システム(仮称)」が不可欠だと指摘。このため、国交省が設けた「技能労働者の技能の『見える化』ワーキンググループ」への参画を通じ、同システムの構築に取り組む。
賃金の改善については、前の提言で優良技能者(優秀な基幹技能者)の標準目標年収を600万円と設定。ただ、リーマンショックなどを背景とする建設投資額の縮小で労務単価が下落した結果、技能労働者の平均年収は全産業の平均レベルより約26%低い392万円にとどまっている。
改定版では▽適切な価格での下請契約の締結▽適切な受注活動の実施▽適切な労務賃金の支払いの要請―によって改善。年齢や優良技能者かどうかを問わず全体的に年収を引き上げ、全産業平均レベルに近づけることで入職促進につなげる。20代で約450万円、40代では約600万円との具体的な値も示した。
重層下請構造の改善で、18年7月までに下請会社数を原則2次以内に減らすとしたのは、労務賃金改善等推進要綱(13年7月)の「5年後を目途」とする目標を具体的にした格好。日建連会員はその達成に向け、14年度中に段階的な次数目標を設定して改善を進める。専門工事業団体や下請けの協力会などと連携し、中間搾取で労務賃金を圧迫する不適格業者を排除して、健全な下請構造を目指す。
この他、技能継承の支援策に富士教育訓練センターの充実・強化を追加。18日の理事会で、施設の建て替えに3億円を寄付するための臨時会費の徴収を正式決定した。
提供:建通新聞社