太田昭宏国土交通相は21日の閣議後会見で「賃金の上昇傾向が見られることから、公共工事設計労務単価などを今月中に関係機関と調整し、見直しを行うよう指示した」と述べ、例年3月に改定している労務単価を1月中に見直す方針を表明した。全国でインフレスライドも適用し、既に契約済みの工事にも新単価を適用できるようにする。単価改定は13年度補正予算の成立を見据えた「公共事業の円滑な施工確保対策」の一つ。対策にはこのほか「主任技術者の兼任要件の緩和」や「柔軟な工期設定」「歩切りの根絶」なども盛り込まれる。
労務単価は、昨年3月に全国全職種平均で15・1%増の大幅な引き上げを図るとともに、入札不調の状況などを踏まえて「機動的」に単価を引き上げることができる措置を講じていた。今回は、賃金の上昇傾向や不調の発生状況などを踏まえて改定する。
労務単価の改定に合わせ、全国でインフレスライドも適用する。既に契約した工事のうち、改定の基準日から工期を2カ月以上残す工事について、インフレスライドを適用して契約額を変更できるようになる。新単価を着工済みの工事にも適用するための措置。業務委託の積算に使用する「設計業務委託等技術者単価」も1月中に見直す。
適正な予定価格を設定させるため、労務単価改定に加えて、維持修繕工事の歩掛りのうち「橋梁補修工」(ひび割れ補修、断面修復、表面被覆)を14年度工事から新設したり、一部の自治体で依然として行われている「歩切り」の根絶をあらためて要請する。要請した上で歩切りを続けている自治体には、個別の指導や名称の公表などの対策も講じる。
人手不足対策としては、13年度補正予算成立のタイミングをみて、主任技術者の専任配置要件を緩和する。国交省では、13年2月に主任技術者が「5`程度以内の距離にある複数工事(原則2件程度)」を兼務できる措置を講じたが、この範囲を「10`程度」にさらに緩和する。同じ緩和措置を同年9月から東日本大震災の被災地で限定して講じており、この措置を全国にも拡大する格好だ。
入札不調・不落の発生を未然に防ぐため、柔軟な工期設定も認める。受注企業の希望に応じて工期の開始時期を調整する「フレックス工期」や、工事開始前に労働者確保などの準備を行う「余裕期間」(実工事期間の30%かつ3カ月以内)など、既に地方整備局で実施している措置を全国的に取り入れる。
特に入札不調が目立つ公共建築工事の施工確保に向けては、入札日直近の最新単価適用の徹底、見積もりを活用した単価設定、各地方整備局への「公共建築相談窓口」の設置などの対策を講じる。
提供:建通新聞社