国土交通省は、全国約106万戸に上る老朽化マンションの建て替えを促進するため、マンション建替え円滑化法を改正し「マンション敷地売却制度」を創設する。新制度の創設で、5分の4以上の賛成で区分所有者がデベロッパーにマンション敷地を売却できるようになる。区分所有者は、デベロッパーが建設する新たなマンションに再入居するか、他の住宅への住み替えを選択できるようになるため、従来の建て替えよりも合意形成が容易になるという。同省は24日に開会する通常国会に改正法案を提出する考えだ。
全国のマンションストック総数は、12年末時点で約590万戸で、このうち旧耐震基準で建設されたものは約106万戸。完成後40年超のマンションは20年後に8倍まで増加するという試算もある一方、経年とともにマンション居住者の高齢化率や空き住戸率も高まる。
一方、マンション建替え円滑化法に基づく建て替えは、建築規制や費用面での問題、合意形成が困難などを理由に、02年の法施行以降の実績が183件・約1万4000戸(13年4月時点)にとどまっている。
こうした状況を踏まえて国交省は、同法改正で新たな老朽化マンションの再生促進策を講じる。促進策の柱となるマンション敷地売却制度では、特定行政庁から耐震性不足と買受計画(マンションの買受・除却、代替住居の提供・あっせんなど)の認定を受けた前提で、老朽化マンションの区分所有者が5分の4以上の賛成で敷地売却を決議する。
区分所有者はその後、「マンション敷地売却組合」を設立し、売却に反対する居住者に売渡請求を行う。売却金の分配計画についても認可を受け、組合がマンションと敷地の権利を取得した上で、デベロッパーにマンションと敷地を一括で売却する。
既存マンションの除却後に建設される新マンションにも、法改正で敷地面積などの条件を満たすと容積率の緩和を受けられる特例を設ける。法改正では、現行法に基づくマンション建て替えに対しても、この特例を適用できるようにする。
マンション敷地売却制度の認定を受けた事業に対しては、予算・税制上の支援措置も講じる。具体的には▽優良建築物等整備事業▽都市再生住宅等整備事業▽民間再開発促進基金の債務保証事業―の支援対象に追加するほか、専門家による支援体制も充実させる。
提供:建通新聞社