国土交通省は16日、中長期的な下水道の在り方と方向性を示す「新下水道ビジョン2100(仮称)」を検討している「下水道政策研究会」に、下水道の水環境創造・雨水管理に関する中期目標と施策案を提示した。局地的集中豪雨の増加に対応するため、浸水リスクの高い地区で重点的にハード整備を進めるとともに、地方自治体に浸水被害を最小化するための計画策定を求めるとした。
下水道政策研究会では、2005年の「下水道ビジョン2100」策定から8年が経過し、東日本大震災の発生、国・地方の財政逼迫(ひっぱく)、インフラ老朽化などの課題を反映した新ビジョンの策定作業を昨年10月から進めている。
16日の会合では、水質・雨水管理などの分野でビジョンに盛り込む中期目標と施策を議論。国交省は、近年の局地的集中豪雨の増加に伴い、浸水リスクの高い地下空間高度利用地区や業務集積地区などをリストアップし、緊急的なハード整備で早期に整備水準を向上させる方針を提示した。具体的には、管渠の一部増径や既設管渠のネットワーク化、河川の調節池と雨水貯留施設の接続など、既存ストックを最大限に活用するハード整備を例示している。
また、浸水被害を受けた地区の「再度災害」を防止するため、自治体に最大降雨に対する浸水被害を最小化する計画を策定するよう求め、計画に盛り込まれた事業に財政支援を限定化する。従来の画一的な目標設定から、地域の実情に応じた目標設定への転換も図る。
このほか、下水道の水質面の広域計画である流域別下水道整備計画(流総計画)の「大改革」も進める。下水道の整備で水質改善には一定の進捗(しんちょく)がみられるものの、閉鎖性水域などでは現在も赤潮などが発生し、生態系に悪影響を与えている。計画にエネルギー、資源、防災の視点を取り入れ、流域全体の資源・エネルギーや事業効率性の最適化を図るとした。
研究会は、今夏にも新ビジョンをまとめる予定。
提供:建通新聞社