国土交通省は、インフラの点検・診断を適切に実施する技術者・技能者を育成するため、資格制度確立・活用に向けた検討に入った。現在、民間・大学機関で実施している維持管理に関する研修・資格認定の活用を広げることに加え、新たな資格制度の創設についても検討する。また、診断を専門的に行う公的機関の創設も視野に入れる。この機関が定期的に重要なインフラを診断し、診断結果を施設管理者に報告する仕組みも合わせて検討する。
国交省が設置し、インフラの維持管理・更新などについて議論している「社会資本メンテナンス戦略小委員会」が、最終答申にこうした考え方を盛り込む見通しだ。30日に開いた小委員会の会合では答申案についての最終的な議論が行われた。
国交省の調べによると、点検業務に関係する民間資格・研修は主なもので9件ある。このうち、橋梁点検に関する「橋梁点検技術研修会」(橋梁調査会)やコンクリート部材の「コンクリート診断士」(コンクリート工学会)は資格保有者数が1万人前後に上るが、それ以外は数十人から数百人程度。中身にも温度差が、育成する技術者像にもばらつきがあり、点検・診断業務に関する資格制度は他分野に比べて確立するに至っていない現状にある。
インフラの点検・診断業務は、国・地方自治体のいずれも外部に委託して実施するケースが多いことから、国交省では、業務委託先企業で点検・診断を行う技術者・技能者の育成には、資格制度の確立が欠かせないと判断。
小委員会の答申に、既に民間や大学で行っている資格・研修制度の活用を促進したり、これらと異なる新たな資格制度の創設などの方針を盛り込む。これらの資格保有者の技術を一定水準に保つため、公的な評価機関を設け、この機関に認められた資格保有者が点検業務を担うようにする環境も整備する。
また、重要施設の点検・診断を行う専門機関の設置も視野に入れる。韓国では政府傘下の公的機関である「韓国施設安全技術公団」(KISTEC)が重要施設の診断を定期的に行い、施設管理者に対応を義務付ける制度がある。こうした海外事例を参考に、同様の仕組みが日本にも導入できないか検討するとしている。
提供:建通新聞社