国土交通省は28日、「新たな『国土のグランドデザイン』構築に関する有識者懇談会」の初会合を開き、2050年までの中長期を見据えた国土・地域づくりの指針策定に着手した。国交省は懇談会で、グランドデザインが目指すべき方向を「有史以来の人口減少・高齢化社会においても持続可能な世界最高水準の『ゆたかさ』と『安心』の確保」に置くと説明。避けることができない人口減少への対応に加え、国土政策の観点で少子化に歯止めを掛けて2050年以降に備える「国土・地域少子化対策」を講じる必要があるとした。グランドデザインは2014年春までにまとめる予定だ。
太田昭宏国交相は初会合で「21世紀に入り、これまでの全国総合開発計画や日本列島改造論など、理念・哲学を持った国土論が論じられなくなった」と述べた上で、「100年後の日本も射程に置き、日本の国土と経済発展、都市づくりを考えられる政治情勢になってきた」と懇談会発足の背景を説明した。
おおむね10年程度を計画期間とする国土形成計画が2008年に策定された後、人口減少・高齢化、巨大災害の切迫とインフラ老朽化の進行、グローバリゼーションなど、国土を取り巻く状況は大きく変化している。
国交省は懇談会で、グランドデザインが目指すべき方向を示すとともに、新たな国土づくりの概念についても説明。人口減少で人口の低密度化と地域的偏在が同時に進行する中で、コンパクトな拠点づくりと情報通信・交通の双方によるネットワーク化を図り、国際的にも埋没しない新たな価値を生み出すことが重要だとしている。
懇談会メンバーの有識者からは「人口減少の問題はこれまで議論だけで終わっていた。実行に移すことが必要だ」(大西隆日本学術会議会長)、「日本は急速な貧困化に向かっている。少子高齢化が何をもたらすのか、深く考えてもらいたい」(寺島実郎日本総合研究所理事長)、「グランドデザインは全てを網羅する計画となるのだろうが、最後には施策の優先順位を付けざるをえない」(坂村健東京大学大学院教授)などの意見が挙がった。
懇談会は、14年春までに6回程度の会合を開き、グランドデザインをまとめる。国交省は、省内の若手職員による「タスクフォース2050」を設置し、具体的な施策・プロジェクトのアイデアを練る。
提供:建通新聞社