厚生労働省は、2014年通常国会での介護保険法改正をにらみ、社会保障審議会介護保険部会での検討を本格化させている。先ごろ検討を終えた「都市部の高齢化対策に関する検討会(座長、大森彌東京大学名誉教授)」が促した都市再生機構(UR)との連携や、既存ストック・未利用公有地を活用した特別養護老人ホームの整備を推進するために、同省がどのような制度設計の見直しを行うのかが注目されるところだ。
都市部の中でも特に東京都の特別区は、国内の他の都市と比べて施設整備の用地の確保が厳しいという特殊事情を抱えている。東京都の介護保険施設整備率は全国平均3・12を下回る2・59にとどまっている。
このため、検討会は、都市部の限られた用地を有効活用するために、デベロッパーなどの民間事業者が高層マンションやオフィスビルを建設する際に一部のフロアを特別養護老人ホームとして整備し、社会福祉法人がこれを買い取るなどの案を提示。その上で、こうした整備手法の活用を推進するためにも福祉部局と建築部局が情報共有することの重要性を指摘している。
一方で、現行制度では、都道府県は介護保険事業支援計画の策定の際に、特別養護老人ホームなど広域型施設の整備を調整する単位として医療法に基づく2次医療圏と一致する老人福祉圏域を設定することになっており、広域型施設の必要定員数と、新たに整備する数を圏域ごとに設定した上で施設整備を行うこととされている。
東京都の特別区は、他の都市と比べて面積が極めて狭く、人口密度がい一方で、交通網が発達しているため老人福祉圏域を越えて容易に移動できるという地方の都市にはない特殊事情がある。
現行制度は広域型施設の整備を老人福祉圏域内で完結することを前提としている。社保審での検討は年末に向けていよいよ佳境に入る。
東京都のこうした特殊事情を考慮し、整備数の圏域間調整を例外として認めるか否か、制度の見直しに反映するか―という点についても社保審介護保険部会などの議論を注視する必要がありそうだ。
提供:建通新聞社