国土交通省の吉田光市建設流通政策審議官が就任インタビューに応じた。東日本大震災の復興需要や東京五輪の開催で、一定の公共投資が見込まれることを念頭に「この5年間をめどにもう一度、建設業の足腰を強くすることが必要だ」と強調。今後の建設産業政策のかじ取りに強い意欲を示した。公共工事設計労務単価については「まずは13年度の労務単価を技能労働者の賃金に反映してもらい、来年度以降、自立的に上昇する流れをつくりたい」と述べた。
建設業課長を3年間務め、建設産業政策に携わるのは5年ぶり。「建設業の担い手不足が深刻な状況に陥っている」と話し、「厳しい価格競争の中で企業を身軽にして乗り切るという政策の方向性を、災害時など急場に対応できる地域の業者を支える、といった方向に舵を切ることが求められている」との認識を示した。
入札契約制度については「公共工事品質確保促進法の制定で『品質』の視点が制度に加わったが、ここにさらに『中長期的な担い手確保』の視点を加え、制度を一歩進めたい」と述べ、「制度改正の中身を詰める」とした。
技能労働者の不足については「建設業界が回復基調にあることも関係しているが、むしろ構造的な問題の方が大きい」と指摘。若手入職者の減少に対して「今後5年で建設業に携わる団塊の世代が一斉に第一線を退く。この5年の間に社会保険加入や技能労働者の賃金などの環境を整え、若手に技術・技能を伝承しなくてはならない」とも述べ、強い危機感を示した。
13年度の労務単価引き上げについては「まだまだ足りないという業界の声は聞こえてくる」と述べた上で、引き上げが「これまでデフレで進んできた歯車を逆回転に回し始めたものだ」と解説。引き上げられた労務単価を技能労働者の賃金に適正に反映させることで「この歯車が自立的に回転するようにしてもらいたい」と業界に呼び掛けた。
提供:建通新聞社