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2013/08/06

ICT活用した仕組みづくり考察 弊紙・岐阜大アセマネC共催で 「道路保全を考えるセミナー」開催

 建通新聞社は、道路法の一部が2013年通常国会で改正され、本格的に道路保全の時代が到来しようとしているこの機をとらえ、岐阜大学社会資本アセットマネジメント技術研究センターと共催し「これからの道路保全を考えるセミナー」を2日、名古屋市内で行った。国土交通省中部地方整備局、富士通の後援を得た。
 今回のセミナーは、地方自治体の技術者不足や財源不足が顕在化する中で、今後期待されているICT(情報通信技術)の活用などによるより良い道路保全の仕組みづくりを考えることが目的。
 基調講演に立った中部地方整備局の濱地仁道路保全企画官は道路法改正の概要について解説。「今回の改正のポイントは、点検という視点が法律に盛り込まれたこと」だと強調した。「2013年は社会資本メンテナンス元年。総点検や修繕を速やかに行い、14年度以降は長寿命化計画の策定など本格的なPDCAサイクルへと移行する」とした国土交通省の方針を示した。
 南山大学情報理工学部システム創成工学科の河野浩之教授は、クラウドコンピューティングを活用した道路維持管理の可能性について講演した。「スマートフォンが走行速度や車間距離などの情報を集めることができるようになっている」などと、クラウド技術の活用状況を説明。「情報通信技術は、これからの道路維持管理の分野で活用できる」と述べた。
 岐阜大学総合情報メディアセンターの村上茂之准教授は、「インフラの少子高齢化が進んでいる」として、限られた予算・技術者・時間での戦略的な社会資本整備が不可欠だと指摘。その上で、岐阜大学が岐阜県の協力の下で富士通と共同開発している道路ネットワーク維持管理支援サービスを「デジタルタコグラフやスマートフォンなどを活用して走行中に路面の状態などのデータを収集し、蓄積していくシステム」などと紹介。「通常のパトロール時などにもデータを収集ができる」と特性を強調し、人とICTの組み合わせによる効果的な道路保全システム構築の可能性について持論を展開した。
 パネルディスカッションには、日本橋梁建設協会保全委員会の河西龍彦幹事長、富士通新規ビジネス開発室の島田孝司室長が加わり、道路の予防保全での人とICTの関係をテーマに話し合った。
 河西氏は鋼橋のエキスパートとして「保全の取り組みは日が浅く、市町村レベルでは技術者が不足しているケースがある」と指摘。島田氏もこの見方に同調し、「市町村では道路保全への取り組みに苦労していると聞いたことが、道路パトロール支援サービスを開発した動機の一つ」と説明した。
 河野氏は「これからは社会全体の中で情報をどう共有していくかがポイント」だと指摘。道路保全の分野でもICTは有効だとの見方を示した。
 河西氏は「ICTの活用で損傷を検出することはできるが、その原因を究明し、具体的な対処法を判断することができるのは人だけだ」と強調。
 これを受けて、村上氏は「岐阜大学で実施している総合技術者を育成するME(社会基盤メンテナンスエキスパート)制度が目指すものがまさに判断できる人材の育成」だと応じ、河西氏は「道路保全の分野では人の判断が必要不可欠だが、人の手が届かない部分をICTが補うことで、これからのインフラの保全が飛躍的に進む可能性がある」と締めくくった。

提供:建通新聞社