国土交通省は21日、「地域の建設産業と入札契約制度の在り方」と「建設人材確保対策」についての方向性をそろって示した。受注競争の過度な激化、インフラ安全度の低下、深刻な担い手不足など、建設産業を取り巻く課題に焦点を当て、同省が講じる施策や対策の方向性が示されており、7月以降、中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会などに場を移し詳細を詰めることになる。検討に当たっている日原洋文建設流通政策審議官が建設専門紙の共同インタビューに応じ、これまでの議論の経緯などを話した。
――地域の建設産業と入札契約制度の在り方を検討した経緯と背景を聞かせてください。
「官製談合などの不祥事を発端に一般競争入札が大きく拡大したことを主な要因として、ダンピング受注が増加した。品質を確保する目的で総合評価方式も導入されたが、その流れを止めるまでには至らず、気が付いてみると建設産業に人材が枯渇するという事態を招いてしまった」
「近年何度も行われた入札契約制度の見直しは、建設業者に力を借りていかに行政サービスを向上させるかという本質的な議論を経ず、『不正をいかに防止するか』『発注者の裁量をなくすか』といった点に偏って議論されてきた。結果として、産業の疲弊を招き、社会資本の維持や災害対応などが不安視される状況が生まれている。社会資本を適正に維持するためにはどのような建設業者を選べば良いのか、原点に立ち返る思いで検討会議を設置した」
――現在の入札契約制度にはどんな問題点があるのでしょうか。
「これまで発注者は、目先の工事を仕上げる目的で建設業者を選んできたが、その背景には建設産業が供給過剰の状態にあり『よりどりみどり』という前提があった。建設産業が担い手不足の状態にあり、こうした考え方が通用しないのならば、入札契約制度を考え直す必要があるだろう」
「発注者の人材不足を補う、受注者が持つノウハウを取り入れる仕組みが十分に整備されていない。受注者が発注者の設計図通りにつくるこれまでのやり方だけが、最も望ましい行政サービスといえるのか。受注者側の提案をきちんと取り上げられる制度を整えなくてはならない」
――検討会議では、元請けに限らず、技能労働者を含めて施工体制を確保する必要性も指摘しています。
「これまで、われわれ発注者は元請けだけをみて工事を発注してきたが、今回の公共工事設計労務単価の引き上げに合わせ、下請けが雇用する技能労働者の賃金を引き上げたり、社会保険に加入させるよう元請け団体などに要請した。専門工事業者の評価制度を導入することも検討している」
「建設業では、安値で受注した元請けが赤字のリスクを背負わず、下請けをたたいてリスクを回避してしまうことが起きている。入札行動とリスクが一致せず、結果的に現場で働く技能者の疲弊につながっている」
――「当面の建設人材確保対策」は、この分野で初めて厚労省と連携してまとめました。
「全国的な技能労働者不足の解消を目的に、厚労省と連絡会議を設置して対策を検討した。雇用関係の所管官庁である厚労省はこの面でノウハウもあり、お互いに問題意識を共有して対策をまとめた意義は大きい。2013年度に実施する短期的な施策を中心に、人材確保・人材育成・人材移動の円滑化三つの視点で対策を講じる」
「『建設人材確保プロジェクト』として、全国のハローワークで求人条件などの設定をアドバイスしたり、建設資格の保有者に建設業への就職を薦めるなど、建設業の人材不足を意識した活動に大いいに変期待している」
提供:建通新聞社